効果的な単位認定型高大接続プログラムの運営形態に関する日米比較研究
日本学術振興会:科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
研究期間 : 2017年04月 -2020年03月
代表者 : 西川 潤
2年目は研究枠組および事例分析の両面において進展があった。
前者に関しては、高大接続における単位認定型高大接続プログラムの特質について、いわゆる高大連携の取組や入学者選抜のプロセスと比較した結果、その呼称を「(高等教育)早期履修制度」とすることが適当であると結論付けた。この検討を行った背景には、高大接続という用語が厳密な定義を欠きながら多様な文脈で使用されている現状があった。高大接続を構成する一要素としての「早期履修制度」という位置づけを定めたことで、本研究の方向性をより明確にすることができたと考える。
後者に関しては、日本において米国のAdvanced Placementを直接導入する動きが急進展したことが本研究にも大きな影響を与えた。研究開始前の段階では日本にそのような動きはなく、米国の事例や国内の類似事例の検討から帰納的に望ましい早期履修制度の在り方を探る方式を想定していたが、Adavanced Placementの直接導入は日本における早期履修制度推進の意義、問題点を探る上で極めて有効であると判断し、実際に導入研究会に参加して現場の声も拾いながら研究を進めた。また、実際に導入する上での具体的なプロセスについても、現地の資料をもとに分析を進めた。成果としては、海外大学への進学を希望する高校生にとっては、米国の早期履修制度を経験することが入学選抜上の加点や学習方法への慣れという点において有効であり、日本の高校が導入するメリットは大きいことがわかった。導入のプロセスの煩雑さや費用といった障壁も、国際バカロレアと比べると大幅に低く抑えられているため、実現可能性も十分にある。一方、課題としては英文でのシラバス作成などの教員への負担、学校年度の開始時期の違いによる履修可能授業数の制限、教員研修への参加の困難さなどが挙げられた。