研究者総覧

井上 富雄 (イノウエ トミオ)

  • ライフデザイン学科 教授
Last Updated :2024/03/29

研究者情報

学位

  • 歯学博士(大阪大学)

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J-Global ID

研究キーワード

  • 咀嚼   嚥下   吸啜   2光子励起顕微鏡   カルシウム   セロトニン   オプトジェネティクス   オレキシン   イメージング   パッチクランプ   除脳動物動脈灌流標本   脳スライス標本   睡眠   脳幹   摂食行動   三叉神経   

研究分野

  • ライフサイエンス / 常態系口腔科学

経歴

  • 2024年04月 - 現在  京都光華女子大学短期大学部歯科衛生学科特別契約教授
  • 2023年04月 - 現在  昭和大学名誉教授
  • 2023年04月 - 2024年03月  京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科特別契約教授
  • 2000年04月 - 2023年03月  昭和大学歯学部教授
  • 1993年01月 - 2000年03月  大阪大学歯学部講師
  • 1986年04月 - 1992年12月  大阪大学歯学部助手
  • 1990年04月 - 1992年08月  カリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部/生理科学部博士研究員

学歴

  • 1982年04月 - 1987年02月   大阪大学   歯学研究科   歯学基礎系
  • 1976年04月 - 1982年03月   大阪大学   歯学部   歯学科

所属学協会

  • 日本咀嚼学会   日本顎関節学会   日本口腔インプラント学会   昭和学士会   日本歯科医学教育学会   Society for Neuroscience   日本顎口腔機能学会   日本神経科学学会   日本生理学会   歯科基礎医学会   

研究活動情報

論文

書籍

  • 咀嚼の本3 嚙むことの大切さを再認識しよう
    井上富雄 (担当:分担執筆範囲:口腔生理学から見た咀嚼の重要性)一般財団法人 口腔保健協会 2022年12月 ISBN: 9784896053883 96 8-9
  • 顎口腔機能の評価法・研究法
    井上富雄 (担当:共著範囲:顎口腔のリズム性運動における顎筋、舌筋、上気道筋の協調機構)日本顎口腔機能学会 2022年03月 ISBN: 9784990335250
  • 有床義歯補綴学(山下秀一郎、大川周治、佐々木啓一、武部純、馬場一美、水口俊介編)
    井上富雄 (担当:分担執筆範囲:口腔・顎顔面の機能)永末書店 2021年01月 ISBN: 9784816013836 344 6-12
  • 井上 富雄 (担当:共編者(共編著者)範囲:口腔生理学総論; 咀嚼)医歯薬出版 2020年03月 ISBN: 9784263458464 xxiv, 475p
  • ザ・ペリオドントロジー 第3版(沼部幸博、梅田誠、齋藤淳、山本松男編)
    井上 富雄 (担当:分担執筆範囲:歯周組織の生理学)永末書店 2019年02月 9-11
  • 新編 顎関節症 改訂版(日本顎関節学会編)
    井上 富雄 (担当:分担執筆範囲:顎口腔系の機能)永末書店 2018年07月 37-42
  • 日本顎関節学会学術用語集 第1版(一般社団法人日本顎関節学会 編)
    井上 富雄 (担当:分担執筆範囲:)クインテッセンス出版 2017年07月
  • 新 よくわかる顎口腔機能 咬合・摂食嚥下・発音を理解する(日本顎口腔機能学会編)
    井上 富雄 (担当:分担執筆範囲:筋電図法の基礎; 咀嚼の意義と効用; 咀嚼と脳 ― 咀嚼の中枢制御機構 ―)医歯薬出版 2017年02月 2-5; 123-125; 129-134
  • 咬合のサイエンスとアート(Martin Gross著,小谷野 潔監訳)
    井上 富雄; 中村 史朗 (担当:共訳範囲:神経筋の生理学)クインテッセンス出版 2016年08月 43-62
  • 顎口腔機能の検査・分析 -基礎と実践-
    井上 富雄 (担当:共著範囲:動物を用いた咀嚼運動研究法)日本顎口腔機能学会 2015年 30-43
  • 基礎歯科生理学 第6版(森本俊文・山田好秋・二ノ宮裕三・岩田幸一 編)
    井上 富雄 (担当:共著範囲:咀嚼)医歯薬出版 2014年02月 328-349
  • ザ・ペリオドントロジー 第2版(和泉雄一、木下淳博、沼部幸博、山本松男編)
    井上 富雄 (担当:共著範囲:歯周組織の生理学)永末書店 2014年 9-13
  • 咀嚼のメカニズム;口腔科学(戸塚靖則・高戸毅 監修、70-78頁)
    井上 富雄 (担当:共著範囲:口腔の感覚機能; 咀嚼のメカニズム)朝倉書店 2013年12月 1096 56-61; 70-78
  • 顎口腔系の機能;新編 顎関節症(日本顎関節学会編)
    井上 富雄 (担当:共著範囲:顎口腔系の機能)永末書店 2013年 208 35-40
  • Functions of Toll-like receptors in osteoclast differentiation induced by receptor activator of NF-κB ligand. In The New Frontiers in Research for Oral Cancer, T. Tachikawa (Ed), pp. 35-49)
    Takami M; Miyamoto A; Matsumoto A; Mochizuki A; Tachi K; Baba K; Inoue T; Mijung Y; Shibuya I; Zhao B; Kamijo R MARUZEN. CO. LTD. 2012年
  • 咀嚼運動と顎反射;歯科生理学実習(岩田幸一・三枝木泰丈・泰羅雅登・西川泰央 編著、95-107頁)
    井上 富雄 医歯薬出版 2011年
  • 咬合と咀嚼・吸啜 ④摂食行動、⑤咀嚼能力、⑥吸啜; 最新衛生士教本 歯・口腔の構造と機能 口腔解剖学・口腔組織発生学・口腔生理学(全国歯科衛生士教育協議会 監修;前田 健康、遠藤 圭子、畠山 能子編、96-104頁)
    井上 富雄 医歯薬出版 2011年
  • Involvement of transcription factor IRF-8 in bone metastasis of cancer (Report of Researches in 2009, pp43-47)
    Kamijo R; Zhao B; Mochizuki A; Inoue T; Takami M The Waksman Foundation of Japan Inc. 2010年
  • 顎口腔系の機能評価のための生理学;顎口腔機能の評価、鳴門市、59-65頁
    増田 裕次; 井上 富雄 日本顎口腔機能学会 2010年 59-65
  • 生理学的にみた歯周組織;ザ・ペリオドントロジー(和泉雄一、沼部幸博、山本松男、木下淳博編)、東京、32-35
    永末出版 2009年
  • Orexin modulates neuronal activities of mesencephalic trigeminal sensory neurons in rats: Tansmitters and Modulators in Health and Disease(共著)
    Springer, Tokyo 2009年
  • 系統的な科学的推論を用いた顎口腔機能研究法;顎運動および筋電図検査法、鳴門市、54-59
    日本顎口腔機能学会 2008年
  • 筋電図・顎運動の基礎 -運動単位と筋の張力-;顎運動および筋電図検査法、鳴門市、35-38
    日本顎口腔機能学会 2008年
  • 日本歯科医学会学術用語集(日本歯科医学会編)、東京、
    医歯薬出版 2008年
  • 基礎歯科生理学 第5版(森本俊文、山田好秋編)、東京、357-377
    医歯薬出版 2008年
  • 顎運動制御に関わる口腔感覚情報;咀嚼・嚥下機能の検査法、鳴門市、1-12
    日本顎口腔機能学会 2007年
  • 口腔生理から?を解く どうして食べ物の硬さに応じて適切な咬合圧で咀嚼できるのだろうか? 、東京、52-55
    DENTAL DIAMOND 2007年
  • 筋電図法の基礎;よくわかる顎口腔機能(日本顎口腔機能学会 編)、東京、2-4
    医歯薬出版 2005年
  • 口腔感覚の情報処理;食感創造ハンドブック(西成 勝好、大越 ひろ、神山 かおる、山本 隆編)、東京、77-86
    サイエンスフォーラム 2005年
  • Sensory control of masticatory jaw movements according to food consistencies in the rabbit. (共著)
    Elsevier Science, Amsterdam 2000年
  • Contribution of jaw muscle spindles to the control of mastication. (共著)
    Elsevier Science, Amsterdam 1999年
  • Effects of changing of occlusal height on mastication in the rabbit. (共著)
    Elsevier Science, Amsterdam 1999年
  • Effects of basal-ganglia stimulation on rhythmic jaw movements in the rabbit. (共著)
    Elsevier Science, Amsterdam 1999年
  • Effects of cerebellar ablation on the timing of masticatory force control in the rabbit. (共著)
    Elsevier Science, Amsterdam 1999年
  • Effects of serotonin on spike afterhyperpolarization in rat trigeminal motoneurons. (共著)
    Elsevier Science, Amsterdam 1999年
  • Low-voltage activated calcium conductances in neonatal rat trigeminal motoneurons. (共著)
    Elsevier Science, Amsterdam 1999年
  • Autoregulation of masticatory force in the anesthetized rabbit. (共著)
    Elsevier, Amsterdam and Tokyo 1995年
  • Effect of saliva and licking on the initial portion of taste response of rat chorda tympani nerve. (共著)
    Elsevier, Amsterdam and Tokyo 1995年
  • Facilitation of trigeminal motoneuron excitability by serotonin in the rat. (共著)
    Elsevier, Amsterdam and Tokyo 1995年
  • 顎の位置と運動の感覚(共著)
    風人社、東京 1988年
  • Modulation of cortical sensory evoked potential and jaw opening reflex during mastication in the rabbit. (共著)
    Alan R. Liss, New York 1984年

講演・口頭発表等

  • 転写調節因子Phox2bを発現するニューロンは咀嚼様顎運動の誘発と咀嚼に伴う唾液分泌に関わる可能性がある  [招待講演]
    井上 富雄; 中山 希世美; 望月 文子; 壇辻 昌典; 中村 史朗
    第65回歯科基礎医学会学術大会 2023年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
  • 転写調節因子Phox2bを発現するニューロンの咀嚼様顎運動リズム形成と唾液分泌制御に対する役割  [招待講演]
    井上 富雄
    第64回歯科基礎医学会学術大会(歯科イノベーションロードマップシンポジウム 『健康長寿社会を目指す口腔機能低下の予防と回復法の確立』) 2022年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
  • 加齢に伴う口腔機能低下と大脳皮質機能  [招待講演]
    井上富雄
    日本老年歯科医学会第32回学術大会(シンポジウム 1; 口腔機能の生理的老化と病的老化) 2021年06月 口頭発表(招待・特別)
  • Properties of Phox2b-expressing premotor neurons targeting jaw-muscle motoneurons  [招待講演]
    Tomio Inoue
    The 9th Federation of the Asian and Oceanian Physiological Societies Congress (Symposium 11; Advances in the mastication and swallowing physiology to prepare for an aging society) 2019年03月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • 閉口筋運動ニューロンにおけるグルタミン酸性シナプス応答のセロトニンによる増強  [招待講演]
    井上 富雄
    第60回歯科基礎医学会学術大会(メインシンポジウム2; 食に関わる運動・感覚の生理学) 2018年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • 咀嚼の神経メカニズム  [招待講演]
    井上 富雄
    日本咀嚼学会第28回大会(特別講演) 2017年09月 口頭発表(基調)
  • Properties of neuronal circuitry composed of supratrigeminal premotor neurons and trigeminal motoneurons  [招待講演]
    Tomio Inoue
    The 92nd Annual Meeting of The Physiological Society of Japan (Symposium 14; Sensory and motor mechanisms regulating feeding behavior) 2015年03月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • Neural mechanisms controlling jaw and tongue movements  [招待講演]
    Tomio Inoue
    Neuroscience 2014 Satellite Events; Neural Mechanism of Feeding and Swallowing 2014年11月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
  • Neural mechanisms controlling jaw and tongue movements  [招待講演]
    Tomio Inoue; Mutsumi Nonaka; Yoshiaki Ihara; Shiro Nakamura; Kiyomi Nakayama; Itaru Yazawa; Ayako Mochizuki
    Neuro2013 (Symposia; Neural control of feeding behaviors) 2013年06月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • Coordination of NMDA-induced suckling-like rhythmic activity in the trigeminal and hypoglossal nerves of in vitro brain preparations from newborn mice  [招待講演]
    Tomio Inoue; Kiyomi Nakayama; Yoshiaki Ihara; Shiro Nakamura; Ayako Mochizuki; Koji Takahashi
    Neuroscience 2012 (NANOSYMPOSIUM; Oral Movements) 2012年10月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • 下顎と舌運動制御の神経機構  [招待講演]
    井上 富雄
    日本味と匂学会第46回大会(シンポジウム「食べる」ことの仕組み:分子・脳・学習) 2012年10月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)

作品等

  • Functon and disorder of the Brain
    2002年

MISC

受賞

  • 2012年05月 昭和大学 上條奨学賞
     基礎歯科医学教育の充実への貢献 
    受賞者: 井上 富雄
  • 1999年12月 第2回大阪大学歯学部弓倉学術奨励賞
     JPN

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2022年04月 -2025年03月 
    代表者 : 中村 史朗; 井上 富雄; 弘中 祥司
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2022年04月 -2025年03月 
    代表者 : 中山 希世美; 井上 富雄
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2022年04月 -2025年03月 
    代表者 : 川添 和義; 美島 健二; 井上 富雄; 栗本 慎一郎
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2021年04月 -2024年03月 
    代表者 : 望月 文子; 井上 富雄; 船戸 弘正
     
    ブラキシズムは歯ぎしりや食いしばりなどの口腔悪習癖の総称で、ストレスや薬剤の服用など、さまざまな因子が複雑に関与して発症する多因子疾患であるが、その発症メカニズムはいまだ不明である。我々は、ブラキシズムの誘発因子の一つで抗うつ薬であるセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)をマウスに投与し、睡眠中、とくにノンレム睡眠中の咀嚼筋の活動性が上昇することを明らかにしたが(Ikawa Y. et al. Neurosci Res, 2016)、強い増強効果は認められなかった。そこで本研究では、睡眠時ブラキシズム発症に関与が指摘されているセロトニンあるいはGABAの作用、およびこれらの相互関連について明らかにするため、①三叉神経運動核および縫線核に投射するGABA神経の部位を特定、②咬筋の活動とGABA神経の活動との関連を薬理遺伝学的に検討、③セロトニン神経とGABA神経の活動をそれぞれ光遺伝学的および薬理遺伝学的に操作したときの咬筋活動への影響を検討し、セロトニン神経とGABA神経の活動を人為的に操作して、ブラキシズムの発症メカニズムの解明に迫る。 申請者はこれまでに、脳波や各種筋電図などの生体電気信号取得システムを構築し、このシステムを用いて報告を行ってきた(Katayama K. et al. Neurosci Res, 2015; Ikawa Y. et al. Neurosci Res, 2016; Ikeda M. et al. in preparation)。このシステムを用いて、2021年度は、三叉神経運動核にGABAニューロンの軸索を投射する中脳水道周囲灰白質腹外側部(ventlateral PAG: vlPAG)に存在するGABA産生ニューロンの活動性を薬理遺伝学的に抑制、あるいは興奮させたときの睡眠覚醒時間ならびに咬筋活動性を検討した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2020年04月 -2024年03月 
    代表者 : 馬場 一美; 赤松 和土; 西山 暁; 井上 富雄; 美島 健二; 中村 史朗; 高場 雅之
     
    研究者らは先行研究において睡眠時ブラキシズムとセロトニン(5-HT)2A受容体遺伝子(HTR2A)の一塩基多型(SNP)との関連を報告し,細胞レベルでの睡眠時ブラキシズムの表現型の検証を目標として,睡眠時ブラキシズム患者および対照健康成人よりiPS細胞を樹立し,5-HT 2A受容体を発現する神経細胞の分化誘導に成功し,神経細胞の電気生理学的活動記録を行なって表現型検出へ向けた基盤を整備してきた.これらのリソースを利用して,被験者に対し簡易型睡眠ポリグラフ検査もしくは簡易型筋活動測定を実施した.さらに,睡眠時ブラキシズムレベルを測定可能な口腔内装置を開発し,簡易型睡眠ポリグラフ検査と併用させたデータを取得し,自動解析可能なアルゴリズムを検討した上でその妥当性の検証を行なった.その結果,Phasic型の睡眠時ブラキシズムエピソードに一致するイベントを比較的良好に検出できることが示された.これらのデータを集約して,疾患レジストリの構築に取り組んだ.加えて,既存研究にて樹立したiPS細胞から神経細胞を分化誘導し,ニューロンを長期的に培養した際の受動的・能動的膜特性について,HTR2AにおけるSNPのリスクアレルを有する睡眠時ブラキシズム患者特異的iPS細胞から分化誘導したニューロンと,リスクアレルを有しない対照健康成人から樹立したiPS細胞由来のニューロンで電気生理学的特性についての比較検討を行なった.それに先立ち,培養期間に伴う膜特性の変化について評価したところ,分化誘導したニューロンは生体内の神経細胞における極性の形成過程と同様の傾向を示し,培養期間に伴う機能的な成熟が示された.比較の結果,疾患特異的iPS細胞由来神経細胞では,活動電位の基電流が有意に低値を示し,さらに,活動電位の50%持続時間が有意に高値を示すことが明らかになった.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2021年07月 -2023年03月 
    代表者 : 井上 富雄; 中村 史朗; 中山 希世美; 望月 文子; 壇辻 昌典
     
    ラット脳幹スライス標本を用い、Phox2b陽性ニューロンが顎下腺あるいは舌下腺を支配する副交感神経の節前ニューロンである上唾液核ニューロンを興奮させるかどうかを調べた。あらかじめ上唾液核ニューロンの軸索が走行する舌神経に蛍光標識物質のテトラメチルローダミンを注入して上唾液核ニューロンを標識した。矢状断の脳幹スライス標本を作製し、標識された上唾液核ニューロンからパッチクランプ記録を行った。スライス標本上にケージドグルタミン酸を灌流投与し、延髄小細胞性網様体においてPhox2b陽性ニューロンが多数存在する部位に、格子状にレーザー光照射を行ってケージドグルタミン酸からのグルタミン酸解離で同部のニューロンを刺激し、上唾液核ニューロンに興奮性の出力を送るニューロンの存在部位を探った。その結果、上唾液核背側の小細胞性網様体において、上唾液核ニューロンにシナプス応答が誘発する部位が見出された。 さらに、Phox2b陽性ニューロンに光感受性タンパク質のChRFR(光照射で活性化しニューロンを興奮させる)が発現する遺伝子改変ラットを用いて同様の脳幹スライス標本を作成し、上の実験で明らかになった延髄小細胞性網様体の部位に光照射を行ったところ、上唾液核ニューロンに興奮性のシナプス応答が誘発された。以上の結果から、上唾液核背側の延髄小細胞性網様体Phox2b陽性ニューロンは、興奮性の出力を上唾液核ニューロンに送り、唾液の分泌に関わる可能性が明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2019年04月 -2023年03月 
    代表者 : 中山 希世美; 井上 富雄
     
    咀嚼運動はヒトが効率良くエネルギー摂取をするためにも、脳の活性化を促し健康寿命を延ばすためにも重要な運動である。本研究は、Phox2B陽性ニューロンに光遺伝学の技術を用いてアプローチすることで、咀嚼運動の神経回路がどのようなニューロン群から構成されているのかという問いに答えることを目的とする。2021年度には、延髄孤束核と同様に多くのPhox2B陽性ニューロンが存在する小細胞性網様体/中間網様核について調べた。この部位には三叉神経運動核に直接投射するニューロンが多数含まれており、以前より咀嚼運動形成への関与が示唆されていた。青色の光刺激により活性化する光活性化タンパク質であるチャネルロドプシン(ChRFR)をPhox2B陽性ニューロンで発現するトランスジェニックラット(Phox2BChRFRラット)に対して、小細胞性網様体/中間網様核に光刺激用のカニューレを埋入した。また、咬筋および顎二腹筋に筋電図電極を取り付け、光刺激中の筋電図記録を行った。カニューレを介して青色(470 nm, 1-2 mW, 1 sec)の光刺激を行ったところ、刺激開始から500 msecほど遅れて、咬筋と顎二腹筋の両方に4-6 Hzの筋活動が見られた。これらの筋活動は、位相にずれがあり、咬筋の活動が顎二腹筋の活動に先行して起こっていた。この結果から、孤束核や三叉神経上核のみならず、小細胞性網様体/中間網様核のPhox2B陽性ニューロンも、咀嚼様の顎運動の形成に関与していることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2019年04月 -2023年03月 
    代表者 : 中村 史朗; 井上 富雄; 弘中 祥司
     
    哺乳類が生後、吸啜から咀嚼へと摂食行動を変える過程で、末梢器官だけでなく脳神経系もまた大きく発達する。食べ物の性状に合わせた噛む力の精緻なコントロールは、三叉神経運動ニューロンへの興奮性および抑制性シナプス入力によるニューロンの興奮性の制御により行われると考えられている。したがって、抑制性シナプス入力が咀嚼の獲得に向けて発達・成熟すると考えられるが、未だ不明な点が多い。本研究では、主に電気生理学的手法を用いて、咀嚼の獲得期における抑制性シナプスの形成・成熟パターン、抑制性シナプス形成の時期特異的抑制が咀嚼に与える影響、抑制性シナプス形成に対する口腔感覚の役割を解析することを目的とし、咀嚼機能の獲得における抑制性シナプス形成の役割の解明を目指す。 令和3年度は、閉口筋および開口筋運動ニューロンに対する抑制性シナプス伝達において、単一神経終末からのGABAおよびグリシンの共放出特性を解析した。生後2~5、9~12、14~17日齢の咬筋および顎二腹筋運動ニューロンの抑制性微小シナプス後電流(mIPSC)をパッチクランプ法により記録した。各mIPSC成分の減衰相をmono-またはbi-exponential関数でフィットさせ、mono-exponential関数にフィットする単相性の成分はGABAまたはグリシンのみ放出された電流成分、bi-exponential関数にフィットする二相性の電流をGABA/グリシン共放出による電流成分とした。この基準に基づいてすべてのmIPSCを解析したところ、生後発達期を通して咬筋および顎二腹筋運動ニューロンともにGABA/グリシンの共放出によるmIPSCが記録された。各ニューロンの全mIPSCにおけるGABA/グリシン共放出の割合は、平均20%~30%であった。咬筋、顎二腹筋運動ニューロンともに、共放出の割合が生後発達とともに有意に減少した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2018年04月 -2022年03月 
    代表者 : 望月 文子; 井上 富雄; 船戸 弘正
     
    ブラキシズムは歯ぎしりや食いしばりなどの口腔悪習癖の総称で、ストレスや薬剤の服用、遺伝子要因などが関与する多因子疾患であるが、発症メカニズムは不明である。我々は、ブラキシズムの誘発因子である抗うつ薬、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)をマウスに投与し、ノンレム睡眠中の咬筋の活動性が上昇することを見出した。この現象を指標に、中脳水道周囲灰白質腹外側部(vlPAG)に存在するGABAニューロンの活動性をDREADDシステムを用いて変化させたが、咬筋活動性はほとんど変化がなかった。これらの結果から、SSRIによる咬筋の活動性上昇はvlPAGのGABAニューロンは関与していない可能性が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2018年04月 -2021年03月 
    代表者 : 池田 美菜子; 井上 富雄; 馬場 一美
     
    神経ペプチドであるオレキシンは三叉神経運動核に作用し、咀嚼筋活動を亢進する作用を示すが、詳細な作用メカニズムは不明である。そこで本研究では、生理的状態のオレキシンが三叉神経領域を介して咀嚼運動にどのように影響するのか、生体レベルで解析した。三叉神経運動核の周囲にオレキシン神経からの投射があるかどうか検討するために、両側の三叉神経運動核に逆行性のAAVベクターであるAAV-CAG-tdTomatoを注入し、脳切片を作製して観察したところ、オレキシン産生ニューロンから三叉神経運動核周囲に投射があることが確認できた。このことから、オレキシンが三叉神経運動核に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆される。
  • 大脳除去マウス動脈灌流標本の咀嚼・嚥下機能を指標にした食欲不振実験モデルの開発
    文部科学省:科学研究費補助金(挑戦的研究(萌芽))
    研究期間 : 2019年06月 -2021年03月 
    代表者 : 井上 富雄
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2016年04月 -2020年03月 
    代表者 : 中山 希世美; 井上 富雄
     
    脳内ヒスタミンは、咀嚼によって濃度が上昇し、摂食を抑制すると考えられている。本研究では、感覚や運動などの生体機能を残した状態で、脳深部に存在するヒスタミンニューロンの活動を可視化する実験モデルを確立した。また、光照射や合成リガンドの腹腔内投与によりニューロンを活動させることの出来るチャネルタンパクをヒスタミンニューロンに発現させたマウスを作成した。このマウスを用いてヒスタミンニューロンを活性化させた時に摂食行動や咀嚼運動にどのような影響があるかを調べたが、ヒスタミンニューロンの活性化は摂食行動や咀嚼運動に有意な変化をもたらさなかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2016年04月 -2020年03月 
    代表者 : 中村 史朗; 井上 富雄
     
    摂食行動の臨界期制御におけるグルタミン酸受容体の役割を解明するため、顎筋支配運動ニューロンへのグルタミン酸性シナプス伝達の発達様式を電気生理学的に解析した。閉口筋運動ニューロンでは、生後初期にGluN2AとGluN2BをもつNMDA型受容体を介したシナプス入力が豊富で、発育に伴い減少した。一方、開口筋運動ニューロンでは生後発達期を通してNMDA型シナプス入力に変化はなかった。したがって、興奮性シナプス入力の生後発育様式は機能の異なる運動ニューロン間で異なること、生後初期のラット閉口筋運動ニューロンへのNMDA型受容体グルタミン酸性入力にはGluN2AとGluN2Bが関与することが示唆された。
  • 光操作技術を用いた咀嚼筋活動制御におけるセロトニン神経系の役割の解明
    文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2017年04月 -2020年03月 
    代表者 : 井上 富雄
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2015年04月 -2019年03月 
    代表者 : 望月 文子; 井上 富雄; 高見 正道
     
    IRF8は破骨細胞分化を負に制御する転写因子として知られているが、病的な骨破壊での役割はいまだに不明な点が多い。そこで、野生型マウス(WT)とIRF8遺伝子欠損マウス(IRF8 KO)にⅡ型コラーゲン抗体誘導性関節炎を誘導し、関節炎の炎症の重篤度を示すRAスコアを算出したころ、 WTと比較して、IRF8 KOマウスで誘導した関節炎でRAスコアが有意に高かった。また、膝関節を中心に大腿骨から頸骨の組織切片を作製しHA染色を行ったところ、IRF8 KOの膝関節腔内に炎症性細胞の浸潤、滑膜の肥厚などが観察された。以上の結果から、IRF8は病的な骨破壊でも負に制御する因子である可能性が示唆された。
  • 咀嚼運動と自律神経系のクロストークの解明
    文部科学省:科学研究費補助金(挑戦的研究(萌芽))
    研究期間 : 2017年06月 -2019年03月 
    代表者 : 井上 富雄
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2015年04月 -2018年03月 
    代表者 : 吉田 教明; 古賀 義之; 藤下 あゆみ; 吉見 知子; 井上 富雄; 中村 文; 内海 大; 伊藤 公成
     
    神経伝達物質を投与した際の顎運動制御メカニズムの解明に関して、GABAアンタゴニストのビククリンを投与すると、顎運動に関しては、開口量や側方移動量、咬合相における前方滑走距離などすべての運動パラメータが増加し、筋活動については、咬筋、顎二腹筋ともに増強された。一方、GABAアゴニストのムシモールを投与すると、顎運動、筋活動ともに逆の結果が得られた。以上より、神経伝達物質を介した情報伝達機序が咀嚼・顎口腔領域の運動調節に重要な役割を果たすことが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2015年04月 -2017年03月 
    代表者 : 韓 仁陽; 井上 富雄; 岩田 幸一; 篠田 雅路; 中村 史郎; 望月 文子
     
    臨床現場では顎顔面部異所性異常を訴える患者に遭遇することがある。原因として頸部炎症や損傷が考えられる。異所性異常疼痛発症に伴う分子メカニズムを解明する為に炎症剤を投与し僧帽筋炎モデルラットを作成した。行動学的観察を15日間行い、4日目において僧帽筋炎モデル群では顎顔面部皮膚の異所性異常疼痛が確認された。また4日目以前より早期段階での疼痛反応の低下が観察された。免疫組織学的な検討において、顎顔面部皮膚の支配部位の脊髄にてマイクログリアの活性化を認めた。研究より疼痛の発現は神経‐グリア間での情報伝達の可能性が示唆された。残念ながら、早期分子シグナルの同定をすることができず、今後の研究に期待したい。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2014年04月 -2017年03月 
    代表者 : 吉田 篤; 小野 高裕; 永瀬 佳孝; 加藤 隆史; 井上 富雄; 森谷 正之; 佐藤 文彦
     
    ラットを用いて、咀嚼筋筋紡錘の自己受容感覚が、三叉神経中脳路核(Vmes)ニューロンによって三叉神経上核(Su5)に伝達された後、反対側の視床後内側腹側核の尾腹内側縁(VPMcvm)に伝達される事が明らかになった。更に、島皮質に伝達される可能性が示された。上行して島皮質に伝達された咀嚼筋筋紡錘感覚が、我々が既に報告している前頭前皮質からVmesへの下行路によってfeedback コントロールを受け得ることを示している。このfeedback コントロールは拘束ストレスや痛みストレスの負荷時に働くことが明らかになった。
  • 動脈灌流標本を用いた舌根沈下の中枢メカニズムの解明
    文部科学省:科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)
    研究期間 : 2015年04月 -2017年03月 
    代表者 : 井上 富雄
  • 新規動物実験モデルを用いた嚥下の中枢制御機構の解明
    文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2014年04月 -2017年03月 
    代表者 : 井上 富雄
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2013年08月 -2015年03月 
    代表者 : 韓 仁陽(清本聖文); 井上 富雄; 岩田 幸一; 篠田 雅路; 中村 史郎; 望月 文子; 中山 希世美
     
    僧帽筋へのCFA投与により、顔面部異所性異常疼痛が生じる事が示唆され、microgliaの活性化とp38MAPKのリン酸化、IL-1β分泌が関与するデータが得られた。p38リン酸化阻害剤を用いた際、microgliaの活性化とp38MAPKのリン酸化、IL-1β分泌、ニューロンの興奮変調が抑制される結果が得られた。 本研究から、僧帽筋炎に随伴する顔面部異常疼痛発症はp38の関与が示唆される。本内容は現在、Molecular Painに投稿中である(5月22日現在)。caspase1については一部結果を得られている。今後、27年度若手研究Bが採択された為、その内容とともに研究を続けていきたい。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2012年04月 -2014年03月 
    代表者 : 池田 美菜子; 望月 文子; 井上 富雄; 加藤 隆史; 片山 慶祐; 野川 泰葉
     
    姿勢維持筋である頸筋は、覚醒時からノンレム睡眠(NREM)、レム睡眠(REM)へ移行するに従い活動が低下するが、咀嚼筋の筋活動の詳細は不明である。そこで、マウスの咀嚼筋(咬筋)の活動を24時間記録してその活動性を解析した。その結果、咬筋と頸筋の筋活動量は明暗リズムと睡眠-覚醒リズムの影響を受けるが、睡眠-覚醒リズムからの影響が大きいこと、咬筋活動は覚醒時とNREMで二峰性を示すことから、咬筋は覚醒時に咀嚼運動などに関与するだけでなく、睡眠時にも少なくとも2種類の入力を受けることがわかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2012年04月 -2014年03月 
    代表者 : 吉田 教明; 古賀 義之; 内海 大; 井上 富雄; 小守 壽文
     
    咀嚼・摂食機能障害の病因を解明することを目的として、神経伝達の異常を発現する遺伝子改変マウスを対象とし、咀嚼・嚥下時の顎運動および関連筋群筋活動を解析した。その結果、咀嚼・嚥下のセントラル・パターン・ジェネレータ(CPG)の形成に異常をきたし、CPGを起点として、顎・口腔領域の感覚受容器が食物の性状を検知し、その性状に見合った適切な咀嚼筋活動の調節を行うフィードバック機構に障害をもたらすことが示唆された。神経伝達物質の咀嚼・嚥下運動制御の役割を解明することにより、摂食機能障害の治療に有用な薬物療法の開発につながるものと考えられた。
  • 三叉神経運動ニューロンの樹状突起における情報処理機構
    文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(C)
    研究期間 : 2011年04月 -2014年03月 
    代表者 : 井上 富雄
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 吉田 教明; 古賀 義之; 北浦 英樹; 田中 基大; 内海 大; 井上 富雄; 井上 誠; 岡安 一郎; 富永 淳也
     
    咀嚼・嚥下機能の発達の過程を観察した結果、機能発育および発達の最適、決定的な時期といわれる臨界期は、6週齢以降に存在することが示唆された。咀嚼・嚥下機能障害発症の機序について、咀嚼・嚥下のセントラル・パターン・ジェネレータ(CPG)形成の障害は生じにくく、CPGよりも下位で障害が惹起される可能性が示唆された。顎運動と舌運動を制御する神経回路は、相互連絡し、協調して活動していることが示唆された。
  • 下顎・舌・口唇・頬の協調運動を制御する神経機構の解析
    文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(C)
    研究期間 : 2008年 -2010年 
    代表者 : 井上 富雄
  • Relationship between respiration and oral fanction
    The Other Research Programs
    研究期間 : 2000年 -2010年
  • Effects of serotonergic inputs on mastication
    Grant-in-Aid for Scientific Research
    研究期間 : 1993年 -2010年
  • Neural network controlling mastication
    Grant-in-Aid for Scientific Research
    研究期間 : 1993年 -2010年
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 吉田 篤; 森谷 正之; 井上 富雄; 小野 高裕
     
    霊長類以外の動物では、大脳皮質から三叉神経運動核への投射は、直接投射でなく運動前ニューロンを介した間接投射が主と考えられる。一方、三叉神経中脳路核ニューロンは一次求心性ニューロンではあるが、細胞体が脳内にあるので、この皮質入力を受ける可能性を持つ運動前ニューロンの一つである。しかしながら、大脳皮質から三叉神経中脳路核ニューロンなどの運動前ニューロンへの直接投射の様態は未だ不明である。よって、本研究はラットを用い、その解明をめざした。 まず、逆行性トレーサーを三叉神経運動核に注入し、標識される運動前ニューロンの分布を検索した。その結果、運動前ニューロンは、運動核と同側の三叉神経中脳路核の他、同側優位で両側性に三叉神経吻側核と主感覚核、結合腕傍核、運動核周囲の網様体、三叉神経上核、外側網様体などに認められた。更に、明らかになった運動前ニューロンの存在部位に逆行性トレーサーを注入し、標識される大脳皮質ニューロンの分布を検索した。その結果、運動前ニューロンの存在する三叉神経運動核周囲へは大脳皮質の一次運動野または二次運動野からの、三叉神経吻側核へは一次体性感覚野からの、中脳路核には島皮質と辺縁皮質からの投射が認められた。 本研究により、大脳皮質から三叉神経運動核へは、三叉神経中脳路核ニューロンを含む運動前ニューロンを介した強い投射が有り、これらは異なる皮質から下行して局在性を示すことが明らかになった。大脳皮質が顎運動を制御する複雑な中枢神経機構の一端が明らかになった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 井上 富雄; 中村 史朗; 時田 賢一
     
    三叉神経上核(SupV)には顎口腔領域からの感覚入力を受けて三叉神経運動核(MoV)に出力を送る介在ニューロンが存在し,顎運動の制御に重要な役割を果たしていると考えられている.そこで本研究は,前頭断ラット脳幹スライス標本に光学的電位測定法とパッチクランプ法を適用し,SupVとMoVの間の局所神経回路の発育様態を調べた.新生ラットにおいて,SupVの電気刺激を行うとMoVに光学的応答が誘発され,細胞外液のCa^<2+>をMn^<2+>に置換してシナプス伝達を遮断してMoVを電気刺激するとSupVに逆行性の光学的応答が認められた.さらに,MoV刺激に逆行性に応答するSupVニューロンからホールセル記録を行ったところ,biocytinを注入して軸索の走行を形態学的に検索すると,同側のMoVに軸索が投射していた.次に,この興奮性出力を担う神経伝達物質を検討した.SupV刺激によるMoVの光学的応答は,CNQXとAPVの同時投与あるいはstrychnine投与により減弱したが,bicuculline投与では変化しなかった.さらに,三叉神経運動ニューロンからグラミシジン穿孔パッチクランプ記録を行ったところ,SupV刺激によってEPSPが誘発され,このEPSPはCNQX, APV, strychnineあるいはbicuculline投与によって減弱した.一方,7日齢以降の動物では,MoVの光学的応答は,CNQXとAPV投与で抑制されたが,strychnineで増強した.また,SupV刺激によってstrychnine感受性の抑制性シナプス後電位が三叉神経運動ニューロンで記録された.以上の結果から,新生ラットでは,SupVからMoVヘグルタミン酸性,グリシン性およびGABA性の興奮性出力を送るのに対して,7日齢以降の動物では,グリシン性およびGABA性のシナプス伝達が抑制性に変化することが明らかとなった.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 山本 隆; 志村 剛; 乾 賢; 脇坂 聡; 井上 富雄
     
    味の質や強さを認知したあとでは、快(おいしい)・不快(まずい)の情動性の反応を伴う。そして、食べ物に対する嗜好性(好き・嫌い)が形成され、食行動にも大きな影響を及ぼす。本研究は、味覚に基づくこれらの現象に脳のいかなる部位で、どのような処理様式で、いかなる脳内物質が関与するのかを明らかにすることを目標にしている。 1)味覚嫌悪学習(CTA):ラットを用い、蔗糖にCTAを獲得させたあと、および電気ショック回避学習(PAL)を獲得させたあとのc-fos発現を視床を中心に詳細に検討した。共に嫌悪(恐怖)学習であるにもかかわらず、室傍核はCTAにより前方背側核はPALにより活性化されることがわかった。 2)脳内物質:ラットの側坐核にカンナビノイド受容体のagonistを投与すると、サッカリンの摂取量は増大するがキニーネのそれは変化がない。サッカリンそのものの摂取量はantagonist投与で減少した。これらの結果から、カンナビノイド受容体はおいしさの発現に重要な役割を演じることが示唆される。 3)脳機能イメージング:ヒトの大脳皮質味覚野の活動を脳磁図法で分析したところ、ミラクルフルーツ作用後のクエン酸応答は糖の応答と酷似していた。すなわち、甘味情報のみが大脳皮質に到達することがわかった。 4)脳内報酬系:味覚嫌悪条件づけを獲得させたラットの腹側淡蒼球にオピオイドagonistのDAMGOを投与すると嫌悪行動が減弱した。また同部においてGABA放出量が増大していることがマイクロダイアリシス法により確認された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2004年 
    代表者 : 山本 隆; 志村 剛; 乾 賢; 村上 秀明; 井上 富雄
     
    本研究の目的は、味の刺激により、脳のいかなる細胞が、どのような遺伝子の発現を伴い、どのような物質を産生し、その結果ニューロン応答性がいかなる可塑性変化を示すようになるのかを明らかにすることである。また、ヒトを対象とした実験では、味の質の情報処理、おいしさ・まずさ(快・不快)といった情動性に関する脳機能を非侵襲的脳機能計測法により明らかにすることである。本年度は以下のような研究実績が得られた。 1.味覚嗜好性学習の脳機序に関する研究:ラットの脳内報酬系に属する腹側淡蒼球に投射する神経の有する伝達物質に関し、ドーパミンD_1受容体阻害薬およびグルタミン酸受容体阻害薬の投与によってサッカリン溶液の摂取量が減少する傾向がみられた。オピオイド受容体阻害薬投与によってサッカリンの摂取量は120分後に増大した。 2.マイクロダイアリシスによる脳内物質の動態に関する研究:ラットがショ糖やサッカリンなどの好ましい味を摂取したときはヒスタミンの遊離が認められず、キニーネの味刺激でヒスタミン量が増加したことから、ヒスタミンは嫌悪性の味覚と関与することが示された。 3.味覚嫌悪学習の脳機序:ラットを用い、サッカリンに嫌悪条件づけをしたあとで、腹側淡蒼球にビキュキュリンを投与してGABAの働きをブロックすると嫌悪行動が減弱した。 4.非侵襲的脳機能計測法による研究:MEGを用い、においと食物画像の同時刺激を行ったときの脳活動を調べた結果、一致した刺激(イチゴの香りとイチゴ)のときは不一致の刺激(イチゴの香りとバナナ)のときより視覚野にてより大きな応答が得られた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2003年 
    代表者 : 井上 富雄; 大幡 久之; 山上 芳雄
     
    【目的】 閉口筋の活動は咀嚼する食物の物理的性状によって大きく変化する。一方、開口筋の活動は食物の性状によらず比較的一定しており、開口筋と閉口筋は機能的に異なっている。そこで本研究は、両筋の機能的相違に対応して開口筋運動ニューロン(JOMN)と閉口筋運動ニューロン(JCMN)の膜特性にも違いがあるかどうか調べるために、パッチクランプ法を用いて両運動ニューロンの性質を比較・検討した。実験には、あらかじめ咬筋あるいは顎二腹筋にrhodaminを注入した生後2〜5日齢のラットを用いて,ハロセンで麻酔後断頭し厚さ250μmの切片を作製した。蛍光顕微鏡観察下にて咬筋あるいは顎二腹筋運動ニューロンを視覚的に同定し,近赤外光を用いた微分干渉観察下にてホールセル記録を行い、以下の結果を得た。 【結果・考察】 JOMNはJCMNに比べて、持続が中等度のスパイク後過分極電位(mAHP)の振幅と持続時間が有意に大であり、mAHPのtail currentのdecay time constantも有意に大であった。また、持続1秒の脱分極パルス通電によって誘発された連続スパイク発射パタンを比較すると、単位脱分極あたりのスパイク発射頻度の増加率は、mAHPの差異に対応してJCMNの方が有意に大であった。この差は、apaminを投与してmAHPを抑制すると消失した。一方、経過の早いスパイク後過分極電位(fAHP)の振幅は、JCMNの方がJOMNよりも大であった。さらに、連続スパイク発射後のスパイク後過分極電位(sAHP)の振幅はJCMNの方が小さかった。以上の結果から、JOMNとJCMNのスパイク後過分極電位は異なっており、開口筋および閉口筋の機能的特性の差異を生み出す一つの要因であると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2000年 -2001年 
    代表者 : 増田 裕次; 井上 富雄
     
    咀嚼は食物摂取から嚥下に至るまでの一連の運動により構成されており、咀嚼の進行に伴うこれらの運動の転換はスムーズに行われている。本実験では、線条体におけるドーパミンが咀嚼遂行に対してどのような役割を演じているかを知ることを目的とする。 <咀嚼中のドーパミン量の変動> ウサギの被殻におけるドーパミンの変動をマイクロダイアリシス法を用いて測定した。術者が順次口腔内に試料を挿入することにより、咀嚼を5分間持続させ、その間、被殻より回収した透析液中のドーパミン量を測定すると、安静時に比べて増大していることが明らかとなった。 <被殻へのドーパミン入力遮断による摂食行動の変化> 線条体へのドーパミン入力を遮断したときの摂食行動の変化を調べた。咀嚼を取り込み運動と臼磨運動に分類すると、一定量の飼料を摂取するための取り込み運動の回数が増加し、取り込み時間が減少した。筋電図記録と合わせると、破壊前では取り込み運動中にも臼磨を行っているにもかかわらず、破壊後はそのような行動パターンが減少する傾向にあることがわかった。 <咀嚼中の被殻ニューロンの活動> 無麻酔動物の咀嚼中に被殻からニューロン活動を記録すると、咀嚼運動中に発射頻度を変化させるものが認められた。これらは、咀嚼の開始から終了まで発射頻度を変化させたものと咀嚼の進行に伴う運動の転換に関係して、つまり、口腔内に飼料を挿入してから、臼歯部での臼磨運動に移行するまでの期間(stage I)でのみ活動を変化させるものが認められた。 今回得られた結果から、被殻へのドーパミン入力は咀嚼運動に関係して変化しており、特に取り込み運動に関係していることが示唆された。また、ドーパミン入力を受ける被殻ニューロンが、咀嚼の進行に伴う運動の転換に関係した活動変化を行うことから、ドーパミン入力は咀嚼の進行伴う運動転換に関与している可能性が示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -2001年 
    代表者 : 森本 俊文; 井上 富雄; 岩田 幸一; 神田 健郎; 山田 好秋; 増田 裕次; 前田 定秋
     
    本研究は、咀嚼、嚥下等の口腔機能の加齢に伴う変化がいかなる中枢神経系の変化によってもたらされるか、あるいは加齢に伴う中枢神経系における感覚情報処理の変化を知ることにより、口腔の健康維持に役立てようとするものである。これらの研究結果は以下のようにまとめることができる。 1.老化により減少が明らかとなっている脳幹部のノルアドレナリンあるいは線条体のドーパミンが咀嚼に関与しているかどうかを調べた。ノルアドレナリンは三叉神経運動ニューロンの膜電位を上昇させ興奮性を高めることが明らかとなった。ウサギ被殻へのドーパミン入力は咀嚼運動に関係して変化しており、特に取り込み運動に関係していることが示唆された。 2.老化による痛覚に対する感受性を調べると、老化に伴い侵害刺激に対する二次ニューロンの興奮性は亢進しており、このことは下行抑制系の機能不全によることが示唆された。 3.老化による炎症時の感覚刺激に対する感受性を調べた。老齢ラットは若年ラットに比べて、炎症時の侵害性熱刺激に対する感受性が亢進していることを明らかにした。また、機械的刺激に対する反応性には、老齢ラットと若年ラットでは相違が認められなかった。炎症時にみられる感覚神経の過敏化は、加齢によって変化することが示唆された。 4.加齢に伴う口腔機能の低下が全身にもたらす影響を調べた。加齢に伴い口腔あるいは全身的な疾患により、軟らかい食品しか摂食しえない場合を想定し、実験的に軟食を続けた場合(軟食群)と、軟食を続けてから硬い食品を与えた場合(硬食群)に炎症による痛みに対する感受性に変化が認められるかどうかを調べた。起炎物質を足底皮下に注入後にみられる疼痛閾値低下は、軟食群に比べ硬食群で有意に抑制された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -2000年 
    代表者 : 井上 富雄; 脇坂 聡; 増田 裕次
     
    【研究目的・方法】 哺乳類の摂食行動は生後、発育に伴って吸啜運動からより複雑な咀嚼運動に転換していく。この時摂食行動に関与する中枢神経回路が、口腔諸器官の生後発達と密接に関連して発達していくことが口腔機能の正常な発達に必須であると考えられる。ここで三叉神経運動ニューロンは、吸啜や咀嚼運動を行う際に、中枢の神経回路において形成された下顎の運動指令を筋の収縮を介して下顎の運動に変換する重要な役割を果たす。そこで本研究はこの三叉神経運動ニューロンに着目し、三叉神経運動核を含むラット脳幹スライス標本にパッチクランプ法および細胞内染色法等を適用して、生後さまざまな時期の三叉神経運動ニューロンの基本的電気特性、形態学的特性の記録・解析を行い、三叉神経運動ニューロンの生後発達様式および口腔機能の発達における役割を明らかにすることを目指し、以下のことが明らかとなった。なお補助金は、パッチクランプ用増幅器、電気刺激装置の購入、成果発表の旅費、謝金、電極代などの消耗品代に使用した。 【研究成果】 1.離乳が終わったラットでは、5-HT_7受容体の活性化に続くA-キナーゼの活性化を介してスパイク後過分極電位(mAHP)が抑制された。また、細胞外Ca^<2+>濃度上昇によってC-キナーゼがより活性化されれば、5-HT_7受容体の活性化によるmAHPの抑制効果が増強された。 2.新生仔ラットでは、セロトニン投与により低閾値活性型(LVA)Ca^<2+>チャネルのkineticsが変化して、LVA Ca^<2+>電流が増強されており、この効果は5-HT_<1A/2/7>受容体以外の関与で生じていた。 以上の結果から、三叉神経運動ニューロンは、発育の時期によってセロトニンに対する応答メカニズムが異なっていることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -2000年 
    代表者 : 森本 俊文; 増田 裕次; 井上 富雄; 松尾 龍二; 山田 好秋; 日高 修
     
    歯牙喪失などの口腔機能の低下が学習・記憶を含む脳機能の活性を減弱させることが、臨床的にもあるいは動物実験からも示唆されている。しかし、このことにどのような脳部位が関与しているか、また、そのメカニズムについては不明である。本研究では、このような問題を解明する一端として、脳内生理活性物質に着目し、口腔機能との関係を調べた。本研究結果は以下のようにまとめることができる。 (1)モノアミン類のセロトニンと三叉神経運動ニューロンの関係を、スライス標本を用いて、スパイク後過分極電位および低電位活性型Caチャンネルの特性を調べた。これらの結果からセロトニンは三叉神経運動ニューロンの興奮性を高める機能があることがわかった。 (2)マイクロダイアリシス法を用いた被殻でのドーパミン量の測定、および被殻へのドーパミン入力を遮断後の摂食行動の変化を調べた。これらの結果から、線条体のドーパミンは、摂食行動に関係しており、取りこみ時の行動の調節に関与していることが示唆された。 (3)顎関節炎や耳下腺炎を惹起した慢性疼痛モデル動物を用いて、三叉神経脊髄路核尾側亜核のニューロンの特性を調べると、末梢性および中枢性の過敏化が起こり、この過敏化を抑制する機構に脳内ペプチドであるオピオイドが関与することが示唆された。 (4)軟らかい飼料のみで飼育し、咀嚼行動を抑制した環境下での動物において、足底に炎症を惹起し、脊髄ニューロンの活動性をc-fos発現により調べた。炎症によるc-fos発現は、咀嚼を促進させることにより減少する傾向が認められた。このことは、咀嚼の促進が疼痛抑制に働くオピオイドの分泌を促進する可能性が示唆された。 本研究で得られた口腔機能と脳内生理活性物質の関係に関する知見は、現在明らかにされていない口腔機能の障害が全身におよぼす影響の究明に有用な情報を提供するものと考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -1999年 
    代表者 : 森本 俊文; 井上 富雄
     
    【研究目的・方法】 われわれはラット三叉神経運動ニューロンにおいて、脱分極性スパイク後電位の形成に関与するP型Ca^<2+>チャネルは樹状突起に存在し、過分極性スパイク後電位の形成に関与するN型Ca^<2+>チャネルは、細胞体に分布する可能性を示してきた。そこで本研究は、ラット脳幹スライス標本を用いてノマルスキー微分干渉顕微鏡観察下で、三叉神経運動ニューロンの細胞体と樹状突起から同時に2つのパッチクランプ記録を行う実験系の開発を行い、これらの部位の電位や膜電流を同時に記録・解析することで、三叉神経運動ニューロンの細胞体と樹状突起に分布するCa^<2+>チャネルのサブタイプおよび各サブタイプが関与する電気現象を直接的に調べることを目的とする。平成11年度は、細胞体のカルシウム電流を解析し、以下のことが明らかになった。なお補助金は、パッチ電極のより正確なコントロールに役立つ画像処理装置の購入および実験動物代等の消耗品代に使用した。 【研究成果】 1. 新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンにおいて、閾値が約-65mVで不活性化の速いLVA Ca^<2+>電流と、閾値が-40mV前後でピーク電流が大きくLVA Ca^<2+>電流に比べて不活性化の遅いHVA Ca^<2+>電流が認められた。 2. LVA Ca^<2+>電流の不活性化は膜電位依存性を示した。(V_<1/2>=-71mV). 3. セロトニン(20mM)を投与するとLVA Ca^<2+>電流の活性化の閾値が過分極方向に変化し、ピーク電流が増大したのに対して、HVA Ca^<2+>電流は抑制された. 以上の結果から、新生仔ラット三叉神経運動ニューロンには,LVAおよびHVA Ca^<2+>チャネルが存在し,ニューロンのスパイク発射パタンに影響を与えていると考えられる.またセロトニンは,これらのチャネルの活性を変化させ,咀嚼筋の筋緊張に影響を与えている可能性が示唆された.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 森本 俊文; 井上 富雄
     
    【研究目的・方法】われわれは、異なったタイプのカルシウムチャンネルがそれぞれ三叉神経運動ニューロンのスパイク後脱分極電位と後過分極電位の形成に関与していることを示してきた。そこで本研究はパッチクランプがより良い状態で適用できる三叉神経運動ニューロンの培養系を開発し、三叉神経運動ニューロンにおいて各タイプのカルシウムチャネルがどのように細胞内に分布しまた種々の機能に役立っているかを明らかにするために、三叉神経運動ニューロンに細胞内カルシウム濃度測定法およびパッチクランプ法を同時に適用し、三叉神経運動ニューロンの性質を光学的・電気生理学的に調べることを目的とした。平成10年度は、既に本研究室で開発済みの三叉神経運動ニューロンを含むスライス標本を用い、パッチクランプ法による新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンの低電位活性型カルシウムチャネルの性質の解析をさらに進め、以下のことが明らかとなった。なお補助金は、実験動物代、実験用試薬等の消耗品代に使用した。 【研究成果】 1. 膜電位を-90mVに過分極させてから脱分極パルス通電を行った時の細胞内電位を記録すると、カルシウム依存性のlow-threshold spikcが認められた。 2. 新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンにおいて、閾値が-65mV前後で不活性化の速いLVA Ca^<2+>電流と、閾値が-40mV前後でピーク電流が大きくLVACa^<2+>電流に比べて不活性化の遅いHVACa^<2+>電流が認められた。 3. LVACa^<2+>電流は、200μH Ni^<2+>、1mM amiloriorideで抑制されたのに対して、HVACa^<2+>電流は、50μM Cd^<2+>で抑制された。 以上の結果から新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンにおいて、閾値が-65mV前後で不活性化の速いLVACa^<2+>電流と、閾値が-40mV前後でピーク電流が大きく低電位活性型に比べて不活性化の遅いHVACa^<2+>電流が認められ、LVACa^<2+>電流は、発火パターンなどニューロンの活動に影響を与えていると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 井上 富雄; 脇坂 聡; 松尾 龍二
     
    【研究目的・方法】 本研究は咀嚼を司る中枢神経機構からの運動出力の最終段である三叉神経運動ニューロンにパッチクランプ法と細胞内カルシウムイオン濃度の光学的測定法を同時に適用することで、カルシウムチャネルのタイプ別の性質および細胞内での分布、さらにカルシウムイオンの細胞内流入の動態と細胞膜に発生する電気現象との関連の解析を目的としている。そこで平成10年度は、ガラス管微少電極法による膜電位記録を行い、細胞内カルシウム濃度上昇により、セロトニン投与によるスパイク後過分極電位の減少効果が増強されるメカニズムを検索し、以下のことが明らかとなった。なお研究補助金は主として、実験動物代、試薬などの消耗品代に使用した。 【研究成果】 1. セロトニンは、細胞内環状AMP濃度上昇とA-キナーゼの活性化を介して、濃度依存性にスパイク後過分極電位を減少させる。 2. セロトニンによるスパイク後過分極電位の減少効果は、5-HT_<1A>,5-HT_4以外のレセプターサブタイプが関与している。 3. C-キナーゼを活性化すると、スパイク後過分極電位の減少が認められたが、A-キナーゼ活性の阻害によってC-キナーゼの活性化によるスパイク後過分極電位の減少効果は消失した。またC-キナーゼ活性を阻害すると、細胞外カルシウム濃度上昇によるセロトニンの効果の増強減少が消失した。 4. 新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンの細胞内カルシウム濃度と電気信号の同時測定を行ったところ、連続スパイク発射発生時において細胞内カルシウム濃度の著名な上昇が認められた。 以上の結果から細胞外カルシウム濃度を増加させると、C-キナーゼ活性が上昇し、さらに何らかの過程を介してA-キナーゼ活性を上昇させ、セロトニンのスパイク後過分極電位に対する効果を増強することが明らかとなった。またスパイク発射は、細胞内カルシウム濃度に影響を与える。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 松尾 龍二; 増田 裕次; 井上 富雄; 美藤 純弘; 船橋 誠
     
    研究目的: 延随の外側網様体には顎口腔の自律機能や運動機能に関与する神経細胞集団がある。すなわち、自律神経機能では唾液分泌神経や舌などに分布する血管運動神経が、また運動機能では顎舌運動神経のプレモトニューロンが存在する。これら異なる機能の神経細胞は延随外側網様体に混在しており、外側網様体が自律機能と運動機能の統合的役割を果たしている可能性が高い。そこで、(1)新鮮脳薄切標本を用いて電気生理学的手技により外側網様体の性質を分析した。唾液分泌と舌の血流に関与する外側網様体細胞を個別に標識し、それぞれの細胞の性質を調べた。また、生後二週間までの生後発達を観察した。これに並行して、(2)顎運動、舌運動、唾液分泌、血流変化の相互関連を行動学的に分析した。すなわち、飲水行動時や摂食行動時の唾液分泌と口顎の筋電図を慢性的に同時記録し、顎舌運動と唾液分泌の経時的変化と味覚感受性の変化を分析した。 研究成果: 1.ラットの舌または鼓索神経にそれぞれFITCとローダミンを注入し上唾液核細胞を標識し、新鮮脳薄切標本上で、標識した細胞の活動をホールセルパッチクランプ法で解析した。その結果、顎下腺舌下腺に分布する唾液核細胞は外向き電流(A-current)が著明であり約30Hzの低頻度で発火したが、舌の血管を支配する唾液核細胞はA-currentの時間経過が短く約70Hzの高頻度で発火した。また、A-currentには生後二週間目までに生後発達が認められた。 2.測定箱内で摂食摂水するように訓練したラットを用いて、唾液分泌量と口顎の筋電図活動を記録した。その結果、顎舌の運動と唾液分泌の間には相関関係があるものの唾液分泌は視床下部外側野などの上位中枢から制御作用を大きく受けていることが分かった。舌の血流変化と摂食行動の関連は、さらに分析する必要がある。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1997年 
    代表者 : 森本 俊文; 日高 修; 増田 裕次; 井上 富雄; 松尾 龍二
     
    近年、社会構造の複雑化や社会への広範な競争原理の導入によって、心理的なストレスを訴える人が増えている。一方、口腔領域でも、ストレスに起因すると考えられる顎関節症の患者が増加している。この疾患発病の背景には、閉口筋の過緊張による筋スパズムの関与が考えられている。しかし、どのようにしてストレス(心理的な過緊張)が筋スパズムの発生に結びつくのかのメカニズムについては、未だ十分に解明されていない。この問題の解決には2つの面から取り組む必要がある。1つは、心理的なストレスが果たして咀嚼筋とくに閉口筋の筋緊張を生じるかどうかの現象を確認すること、他の1つは閉口筋の緊張が生じるとすればどのような神経機構で生じるかのを明らかにすることである。本研究では主として後者について解明を志したが、引き続いて前者についても現在研究遂行中である。 筋緊張を生じるメカニズムの解明については次のような6つの研究成果を得た。(1)麻酔ウサギの大脳皮質刺激によるリズミカルな顎運動中に試料を噛んだ時の筋感覚受容器(筋紡錘)からの感覚情報によって下顎張反射が誘発され、脳幹部で自動的に閉口筋運動ニューロン活動が調節されるためであることが判明した。(2)発揮される咀嚼力の大きさと筋紡錘の活動量との間に正の相関が認められた。(3)動的反応を調節するdynamic γ-運動ニューロンの活動が特定の咀嚼過程において持続的に上昇していることが示唆された。(4)三叉神経中脳路核ニューロンの放電パターンによって感覚神経終末を分類できる可能性を明らかにした。(5)三叉神経運動ニューロンに対する生体アミンの効果は細胞内カルシウム濃度によって修飾されることが明らかとなった。(6)味覚嫌悪行動には味覚二次中継核である結合腕傍核が関与することを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1996年 
    代表者 : 井上 富雄; 脇坂 聡; 松尾 龍二
     
    三叉神経運動ニューロンは豊富なセロトニンおよびノルアドレナリン作働性ニューロンからの入力を受けており、これらの神経活性物質を介して活動性の調節を受けている可能性が高い。そこでまず三叉神経運動核を含む脳幹スライス標本を用いて、三叉神経運動ニューロンに対するセロトニンおよびノルアドレナリンの投与の影響を調べた。その結果以下のことが明らかになった。 1.セロトニンおよびノルアドレナリンの投与により、 (1)静止膜電位が上昇し、入力抵抗の増大が認められた。 (2) time-dependent inward rectificationが増強された。 (3)脱分極パルス通電によるスパイク発射頻度が上昇した。 (4)セロトニンの投与により、スパイク後過分極電位の振幅は変化しなかったが、ピーク時点が遅延し、持続時間が延長した。 (5)ノルアドレナリン投与により、スパイク後脱分極電位が増大し、後過分極電位の振幅は減少し、後過分極電位のピーク時点が遅延した。 2.セロトニンとノルアドレナリンで効果の異なるスパイク後電位については、 (1)後脱分極電位は、EGTAの細胞内注入、Ba2^+の投与により増強され、ω-agatoxin-IVA投与により、抑制された。 (2)後過分極電位は、EGTAの細胞内注入、Ba2^+およびω-conotoxin-GVIA投与により抑制され、apaminにより抑制された。 以上の結果から、セロトニンおよびノルアドレナリンは三叉神経運動ニューロンの興奮性を上昇させるが、スパイク後電位については逆の効果を示した。このスパイク後脱分極電位はω-agatoxin-IVA感受性高閾値Ca2^+チャネルを介して流入したCa2^+により形成され、スパイク後過分極電位はω-conotoxin-GVIA感受性の高閾値Ca2^+チャネルを介して流入したCa2^+がCa2^+依存性K+チャネルを活性化することで形成されていることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1996年 
    代表者 : 松尾 龍二; 井上 富雄
     
    研究目的:延髄の外側網様体には顎口腔の自律機能や運動機能に関与する神経細胞集団がある。すなわち、自律神経機能では唾液分泌神経や血管運動神経が、また運動機能では顎舌運動神経のプレモトニューロンが存在する。これら異なる機能の神経細胞は延髄外側網様体に混在しており、外側網様体が自律機能と運動機能の統合的役割を果たしている可能性が高い。そこで、(1)新鮮脳薄切標本を用いて電気生理学的手技により外側網様体の性質を分析した。舌の血流と唾液分泌に関与する外側網様体細胞を個別にマ-キングし、それぞれの細胞の性質を調べた。これに並行して、(2)顎運動、舌運動、唾液分泌、血流変化の相互関連を行動学的に分析した。すなわち、飲水行動時や摂食行動時の唾液分泌と口顎の筋電図を慢性的に同時記録し、顎舌運動と唾液分泌の経時的変化と味覚感受性の変化を分析した。 研究成果:1.生後4-5日のラットの舌または鼓索神経にロ-ダミンを注入し上唾液核細胞を標識し、新鮮脳薄切標本上で、標識した細胞の活動をホールセルパッチクランプ法で解析した。その結果、顎下腺舌下腺に分布する唾液核細胞は外向き電流(A-current)が著明であり約30Hzの低頻度で発火したが、舌の血管を支配する唾液核細胞はA-currentの時間経過が短く約70Hzの高頻度で発火した。 2.測定箱内で摂食摂水するように訓練したラットを用いて、唾液分泌量と口顎の筋電図活動を記録した。その血管、顎舌の運動と唾液分泌の間には相関関係があるものの唾液分泌は視床下部外側野などの上位中枢から制御作用を大きく受けていることが分かった。また、唾液分泌量が変化すると、飼料の摂取パターン(顎舌の運動様式)や味覚の感受性が著しく変化することが分かった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1993年 -1994年 
    代表者 : 松尾 龍二; 井上 富雄
     
    1.研究目的 唾液腺の分泌活動は自律神経系により調節されている。このメカニズムを明らかにするため、脳幹部において唾液分泌に関与する神経回路網の性質を電気生理学的手技により検索する。まず、行動学的に摂食中や飲水(味溶液を含む)中の唾液分泌を測定した。また、脳幹部の新鮮薄切(スライス)標本を作製し、in vitroの状態で上唾液核細胞(副交感神経性の分泌中枢)の神経活動を分析した。 2.研究成果 (1)実験動物にはラットを使用した。ラットが多量の唾液分泌を生じるのは、摂食中、毛づくろい中、味覚嫌悪行動中(苦味物質を摂取した時)であった。動物が持続的に味溶液(甘味、塩味、酸味)を摂取している時には、少量の唾液分泌が認められた。 (2)鼓索神経(上唾液核細胞の遠心性線維と孤束核に投射する味神経線維を含む)にHRP溶液を注入し、組織化学的(HRP法)に上唾液核細胞と孤束核を染色した。この結果、上唾液核と孤束核を含む新鮮脳薄切標本の作製が可能であること、また上唾液核細胞は生後約4日めまではほぼ球形をしており、その後約10日めまでに2-5本の樹状突起を有する形態へと変化することが分った。 (3)生後約一週間のラットを使用し、鼓索神経に蛍光色素(テトラメチルロ-ダミン)を注入し、注入2日後に新鮮脳薄切標本を作製した。蛍光色素で標識された上唾液核神経から細胞内記録法またはホールセルパッチクランプ法にて記録を行った。その結果、上唾液核細胞はアセチルコリンに感受性があるらしいことや、興奮状態では約20Hgの頻度でスパイク発射することなどが分った。今後は、孤束核(味覚の中継核)などとの機能的な連絡関係についても調べる必要がある。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1993年 -1994年 
    代表者 : 井上 富雄; 脇坂 聡; 松尾 龍二
     
    咀嚼運動などの口腔機能の発現メカニズムを知る上で、咀嚼筋を直接支配する三叉神経運動ニューロンの電気生理学的特性を調べることは非常に重要である。そこでまずニューロンの発火パターンの形成に影響すると言われているスパイク後電位に着目しその性質を調べた。さらに脊髄や脳幹部の運動ニューロンに豊富な入力が認められているセロトニンの還流投与に対する影響を調べた。その結果以下のことが明らかになった。 1.スパイクに引き続いて後過分極電位(AHP)が記録されたが、この後過分極電位は後脱分極電位(ADP)により、速い成分(fAHP)と遅い成分(mAHP)に分けられた。 2.mAHPは、Ca^<2+>チャネル阻害薬であるMn^<2+>あるいはCo^<2+>により抑制され、細胞外Ca^<2+>濃度の上昇に伴ってその振幅を増大させた。さらにSKタイプのCa^<2+>依存性K^+チャネル拮抗薬のapaminにより抑制された。 3.ADPはapaminによってmAHPを抑制した状態で細胞外Ca^<2+>濃度を上昇させると、振幅を増した。 4.セロトニンの投与により、 (1)記録されたほとんどのニューロンにおいて静止膜電位が上昇し、入力抵抗の増大が認められた。 (2)time-dependent in ward rectificationが顕著になった。 (3)脱分極パルス通電によるスパイク発射頻度が上昇した。 以上の結果からmAHPはSKタイプのCa^<2+>依存性K^+チャネルを介して出現し、ADPはCa^<2+>の流入により出現することが明らかとなった。またセロトニンは三叉神経運動ニューロンの興奮性を上昇させることが示唆された。今後は開口筋と閉口筋の運動ニューロンの相違などを調べ、顎運動出力調節機構の詳細を検討していく計画である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1993年 -1994年 
    代表者 : 森本 俊文; 井上 富雄; 松尾 龍二
     
    慢性的なストレス環境下にある人では、無意識下の噛みしめや歯軋りなどの咀嚼筋活動が生じることは経験的に知られている。また、この現象の背後には、視床下部や大脳辺縁系など高次脳の興奮による交感神経系の関与が考えられるが、そのメカニズムはほとんど明らかにされていない。本研究は、動物を用いて様々なストレスや末梢交感神経系の興奮が咀嚼筋活動に及ぼす影響を神経生理学的方法を用いて解析することを目的とした。実験にはラットを用い、慢性実験と急性実験を行った。慢性実験では(1)ラットを4度の冷水中に入れる、(2)チューブの中に入れて拘束する、(3)無理な姿勢(立位)をとらせる、(4)不安薬(FG7142)をラットにあたえる等の操作を行った。しかしいずれの場合でも咀嚼筋に著しい活動が生じなかった。また、麻酔を施したラットの顎関節腔口にマスタードオイルを注射して痛みを与えたが、一過性の閉口筋活動を除いては咀嚼筋に著しい活動が生じなかった。すなわち、不安や痛みのようなタイプのストレスは、長期間におよぶ閉口筋活動を生じさせないと言える。今後は、どのようなタイプの慢性的ストレスが有効であるかを調べる必要がある。 一方、麻酔にしたラットの頚部交感神経を刺激して閉口筋の活動を調べると、開口によって反射性に誘発された閉口筋活動(下顎張反射)は抑制された。この結果は予想に反するものであると言える。さらに、この抑制は閉口筋中の血流減少のためではなく、筋紡錘の活動が抑制されるために生じることが明らかとなった。また、交感神経の効果は中枢性に生じたものではなく、動脈に沿って閉口筋に入った末梢神経の活動によることが明らかにされた。なお、この研究はJ.Physiol.に掲載された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1987年 -1988年 
    代表者 : 森本 俊文; 増田 裕次; 井上 富雄
     
    〔研究目的〕咀嚼時の閉口筋活動は、食物の性状に対応して調節されている。例えば、硬いあるいは強靱な食品を咀嚼すると閉口筋活動は増大する。同様の現象は麻酔を施したウサギにおいても認められ、リズミカルな大脳皮質性誘発顎運動(CRJM)中に上下顎臼歯間に物体を挿入すると閉口筋活動が増大する。この現象に閉口筋中の感覚受容器が関与するか否かを検討するため、ウサギを用い、1)咀嚼時の閉口筋活動に対する筋感覚遮断の影響について、2)下顎の受動的運動およびリズミカルな顎運動中の閉口筋感覚受容器の活動について分析した。 〔研究方法〕実験には、体重2.5kg〜3.5kgの雄成熟ウサギを用いた。顎運動の記録はHe-Neレーザーを利用した顎運動描記装置を用いた。また、咬筋(閉口筋)と顎二腹筋(閉口筋)により筋電図活動を同時に記録した。閉口筋からの感覚神経が投射する三叉神経中脳路核でのニューロン活動の記録にはガラス管微小電極を用いた。 〔結論〕1.三叉神経中脳路核破壊によって閉口筋の筋感覚入力を遮断すると、麻酔下動物のCRJM中において上下顎臼歯間にテスト物体を挿入したときの閉口筋活動の増大率は有意に減少した。したがって、筋感覚も咀嚼時の閉口筋活動の調節に関与していることが示された。2.筋感覚受容器は、SChの投与により応答性の増大するもの(一次終末)と変化しないもの(二次終末)の2つのグループに分けることができた。このうち、SCh感受性のあるものは主として開口時のみ、あるいは開口時と咬合時の両方に放電を示した。また、これらのニューロンのうち、咬合時にも放電を示すタイプのものが咀嚼時の閉口筋活動の調節に関与している可能性が示された。以上の実験結果により閉口筋中に存在する筋紡錘の一次終末が食物の性状に対応した咀嚼筋活動の調節に役立っていることが強く示唆された。
  • Membrane properties of trigeminal motoneurons
    Grant-in-Aid for Scientific Research

委員歴

  • 2021年01月 - 現在   日本咀嚼学会   理事
  • 2005年04月 - 現在   日本生理学会   評議員   日本生理学会
  • 2021年07月 - 2023年06月   日本歯科医学会   常任理事   日本歯科医学教育学会
  • 2020年06月 - 2022年09月   歯科基礎医学会   理事長   歯科基礎医学会
  • 2010年04月 - 2012年03月   日本顎口腔機能学会   会長   日本顎口腔機能学会