研究者総覧

太田 蕗子 (オオタ フキコ)

  • 真宗文化研究所 講師
Last Updated :2024/01/31

研究者情報

科研費研究者番号

  • 30586243

J-Global ID

研究分野

  • 人文・社会 / 中国哲学、印度哲学、仏教学

経歴

  • 2019年04月 - 現在  京都光華女子大学真宗文化研究所講師

研究活動情報

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2015年04月 -2019年03月 
    代表者 : 太田 蕗子
     
    本研究は、大乗仏教の系譜の中で、特にナーガールジュナを始祖とする中観派の実践体系に着目するものである。平成30年度は、中観派の実践体系と智慧との関係を考察する上で、菩薩の慈悲に着目し研究を進めた。中観派の文献において菩薩の実践道に関して論じた論書として、チャンドラキールティの『入中論』とカマラシーラの『修習次第』があるわけだが、いずれも菩薩が実践道を歩む動機として慈悲を重視している。このように慈悲は智慧と並んで重要な大乗菩薩の基盤となる徳目である。 そこでまず、菩薩の実践としての慈悲行がどのようなものであるか、その具体像の整理を行った。『入中論』で示される実践道において慈悲は、誓願の根本にあるものとされ、菩薩の実践行を生み出す磯となるとされる。このように慈悲は菩薩がその実践道を歩む際に必要不可欠な徳目とされるが、その一方で、菩薩がその行道において常に持ち続けなければならないものであるとされた。つまり、『入中論』の菩薩道においては、慈悲は空性の智慧を得る前段階から要請されるものではあり、空性の智慧が極まっていくのを支える役目として示されているといえる。この慈悲があるからこそ、菩薩は般涅槃することなく、輪廻の中に身を置き、有情を救済する菩薩道をなすことができるのであり、この点が『入中論』では菩薩と声聞・独覚を分ける重要な差異として示されていた。この研究の成果に関しては、現在、雑誌論文への投稿が決定しており、研究成果をまとめている段階である。 以上の研究と並行して、後期中観派のカマラシーラが著した『修習次第』を中心として、後期中観派の論師の思想を整理し、実践道と智慧の関係に着目した研究書を出版するための準備作業を行っている。こちらは現在も作業を継続中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年 -2010年 
    代表者 : 一郷 正道; 小澤 千晶; 太田 蕗子; 上野 牧生
     
    後期インド仏教の論師カマラシーラによる『修習次第』の翻訳研究を行い,付録に,瞑想の方法を述べる箇所のテキスト対照表,引用文献一覧,シノプシス等を加え冊子にまとめた.本書が提示する実践方法が「唯識観行」に基づくことを,先行する唯識文献の対応箇所をあげることで具体的に提示した.また引用文献一覧では,他の文献で同一文献の同一文言を引用するケースを精力的に収集し提示した.これらは,仏教における「哲学」と「行」の伝承の系譜を明らかにする基礎資料を提供するものともなる.