研究者総覧

細川 昌則 (ホソカワ マサノリ)

  • 看護学科 学部長・教授
  • 看護学研究科 看護学専攻 教授
Last Updated :2024/02/01

研究者情報

学位

  • 医学博士(京都大学)

J-Global ID

研究キーワード

  • 細胞生物学   基礎老化学   実験病理学   Cell Biology   Gerontology   Experimental Pathology   

経歴

  • 2019年04月 - 現在  京都光華女子大学健康科学部学部長
  • 2017年04月 - 現在  愛知県医療療育総合センター発達障害研究所名誉所長
  • 2017年04月 - 現在  京都光華女子大学健康科学部看護学科教授
  • 2008年 - 2017年03月  愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所所長・病理学部長
  • 2002年 - 2017年03月  愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所副所長・病理学部長
  • 1998年 - 2002年  京都大学再生医科学研究所再生誘導研究分野助教授
  • 1989年 - 1998年  京都大学胸部疾患研究所老化生物学分野助教授
  • 1979年 - 1989年  京都大学胸部疾患研究所(結核胸部疾患研究所)病理学部門助手

学歴

  •         - 1976年   京都大学   Faculty of Medicine

所属学協会

  • 老化促進モデルマウス(SAM)学会   日本基礎老化学会   日本病理学会   日本重症心身障害学会   日本先天異常学会   

研究活動情報

論文

作品等

  • 長寿医療研究委託事業(厚生労働者)
    2000年
  • Research Grant for Longevity Sciences
    2000年

MISC

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2013年04月 -2017年03月 
    代表者 : 細川 昌則; 千葉 陽一; 榎戸 靖; 島田 厚良; 河内 全; 岸 宗一郎
     
    成熟児の出産では、新生児仮死などにより、しばしば低酸素性虚血性脳症(HIE)が生じ、様々な脳障害をきたす。早産児では、分娩時の低酸素性虚血は、脳室周囲の白質の変性、脱落を特徴とする脳室周囲白質軟化症(PVL)をきたす。未熟脳の脳血管系の脆弱性とグリア細胞の未熟性がその原因と考える一方、胎内環境の関わりが言われている。 本研究では、グリア細胞の分化の制御機構について研究を進めたが、先天性脂質代謝異常症の1つニーマンピック病C型の研究過程で、細胞内コレステロール輸送が、オリゴデンドロサイトの前駆細胞からの分化、ミエリン化を制御していることを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 河内 全; 細川 昌則; 島田 厚良; 榎戸 靖; 千葉 陽一
     
    モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)は脳発達期の回路形成に関わることが知られていたが、脳内炎症時の機能は不明な点が多い。我々は虚血ストレスを与えた発達期の脳組織でMAGLの転写発現が抑制され、LPS刺激によってミクログリアにおける転写発現が抑制されると同時にプロテアソームによる分解から免れて安定化することを見出した。定常状態のMAGLはStat6によって発現が制御されるが、MAGLは酸素濃度によらずLPSで活性化される転写因子NFκBによるIL-6等のサイトカインの誘導には必須ではないことが示された。またMAGLはミクログリアのFcγレセプターを介した貪食能を亢進することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2006年 -2008年 
    代表者 : 島田 厚良; 細川 昌則
     
    神経変性疾患では特定の脳領域に変性が進行する傾向があるが、そのメカニズムは不明である。ここでは、ニューロン変性が加齢に伴って大脳辺縁系に選択的に進行するSAMP10マウスを神経変性のモデルとして解析した結果、神経変性の原因として、タンパク質分解系であるプロテアソーム活性の低下、軸索を構築する主要な細胞骨格タンパク質であるα-internexinのリン酸化の亢進が重要であることがわかった。神経変性の原因遺伝子については、15番染色体の特定の領域に存在することは突き止めたものの、同定にはさらなる研究が必要である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 細川 昌則; 千葉 陽一; 島田 厚良; 佐藤 衛; 齊藤 優子
     
    老化促進モデルマウスSAMP系統は、対象のSAMR1系統マウスと比較して、ミトコンドリア機能障害により高酸化的ストレス状態を示す。この高酸化ストレス状態は培養線維芽細胞の培養加齢を促進し、抗酸化剤の添加は、培養加齢の促進を部分的に軽減する。SAMR1マウスとSAMP11系統マウス母親を相互に入れ替えた交雑で作製したF1マウスの培養加齢は、SAMR1マウスと変わらず、培養加齢の促進は劣性形質であることが示された。またF1交雑マウスの培養加齢に母親系統の影響は見られず、SAMP系統マウスのミトコンドリア機能障害には核遺伝子に由来する電子伝達系サブユニットが関係し、また機能障害が劣性の形質であることが推測された。 SAM系統マウスの成立メカニズムは、交雑により形成された遺伝子プールから、老化促進、寿命、老化形質などに基づき、選抜交配を繰り返すことによると考えられている。マウスゲノムデーターベースの情報を基に、SAMP11系統の近縁系統であるSAMP10系統とSAMR1系統のマイクロサテライトマーカーに多型が認められる第1番〜第19番染色体領域に存在する、ミトコンドリア電子伝達系サブユニットをコードする遺伝子を検索した。複合体Iに関係する37遺伝子のうち7遺伝子、複合体IIIに関係する8遺伝子の内2遺伝子、複合体IVに関係する16遺伝子の内1遺伝子、複合体Vに関係する16遺伝子のうち5遺伝子が有力な検討対象となることが判った。これまでの研究で、SAMP系統マウスのミトコンドリア電子伝達系複合体I、III、Vの機能不全が示されており、今回の結果により、関連サブユニットの探索を一歩進めることができた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 島田 厚良; 細川 昌則
     
    [1]加齢に伴い、大脳皮質・辺縁系を主体とした神経変性を比較的若齢期より自然発症するSAMP10マウス(P10)を用い、その脳変性の遺伝的背景を明らかにすべく、量的形質遺伝子座(QTL)解析を進めた。寿命末期まで脳萎縮を呈さないSAMR1マウスとP10とを交配して得た雑種第2世代(F_2)325匹を16ヵ月齢まで飼育し、脳萎縮度を測定した後、DNAを抽出した。F_2の中から、萎縮度の高い方、低い方よりそれぞれ20個体ずつを選び、マイクロサテライトマーカーを用いてシングルマーカー解析を行ったところ、第2番と第15番染色体上に2ヵ所のQTLが示唆された。そこで、第15番染色体上のマーカー7種を用いてF_2からランダム抽出した117個体についてインターバルマッピングを行った結果、セントロメアより54.5cMと57.9cMの3.4cMの間にLRSスコア12.1のQTLを見出した。 [2]ユビキチン・プロテアソーム系は細胞内タンパク質分解機構の中核をなし、その障害は種々の神経変性疾患における異常タンパク質凝集に関わる。P10のニューロンに加齢に伴って出現するユビキチン化封入体に関する形態学的および生化学的検討を行い、R1やC57BLマウス(B6)と比較した。その結果、封入体の分布は、扁桃体・視床下部・海馬・内嗅領皮質・前帯状皮質などに密であった。封入体はR1とB6では加齢とともに緩やかに増加したのに対し、P10では急速かつ著明に増加した。大脳辺縁系関連組織のプロテアソーム活性は、R1では加齢に伴って緩やかに低下したのに対し、P10では急速かつ著明に低下した。一方、辺縁系非関連組織では、P10・R1ともに加齢変化を示さなかった。このように、マウスの脳では辺縁系特異的に、加齢に伴うプロテアソーム活性の低下によってユビキチン化タンパク質がニューロン内に蓄積して封入体を形成することを示した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2004年 
    代表者 : 樋口 京一; 森 政之; 澤下 仁子; 細川 昌則; 中村 明宏; 澤下 仁仔
     
    1)促進老化および老化関連遺伝子の解析:(1)寿命を指標として行ったQTL解析で同定されたSAMP1の短寿命の関連染色体領域(第5,17染色体)のcongenicマウスを作成し寿命の短縮を確認した。(2)骨粗鬆症のモデルマウスSAMP6と高骨量系のSAMP2系との交配による3つの骨量決定遺伝子(Pbd-1,2,3)の同定を目指し、それぞれの染色体領域に対してcongenic, subcongenic, sub-subcongenic系統まで作成した。特にPbd2の候補領域の遺伝子発現解析の結果、Sfrp4(Wnt蛋白質のデコイ受容体)発現量がSAMP6で10倍以上上昇していた。「Sfrp4増加のためWnt蛋白質のシグナル伝達が低下し、骨芽細胞の分化低下の結果、低骨量になる」との仮説を実証中である。(3)アミロイドーシス好発系(SAMP1)と嫌発系(A/J)マウスの交配によるF2と戻し交配マウスを用いてアミロイド沈着程度と連鎖する染色体領域を同定した(第14,19番染色体)。 2)SAMP1精巣における遺伝子発現プロファイルの解析:serial analysis of gene expression(SAGE)法を用いて精巣での遺伝子発現プロファイルの加齢変化を検討し、マウス精巣での約19,000の発現遺伝子を報告した。SAMP1では半数体特異的遺伝子発現に関与する転写因子と下流の一群の遺伝子の発現低下が認められた。 3)老化促進モデルマウスを用いたほかの研究機関と共同研究:SAMP1では活動量が昼間に多く夜間に少ないリズム異常が認められ、運動で改善される事を明らかにした。愛知県心身障害者コロニーとのSAMP10の脳萎縮の機構解明を目指した交配実験、カネカ(株)とのCoQ10の老化遅延作用の検証と作用機構の解析、高知大学医学部と藻類を用いた抗老化効果の等の共同研究を行った。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2003年 
    代表者 : 細川 昌則
     
    1.Kohsakaらがラット脳組織の神経細胞の単離、培養に用いた方法を改変し、ミトコンドリア機能障害、高酸化的ストレス状態、老齢期脳機能障害を示すSAMP8系統マウスから神経細胞、グリア細胞を単離し、培養する方法を作製した。 胎生17.5日齢マウスの脳組織から神経細胞とグリア細胞を単離、培養することができた。神経細胞の培養では、播種後6日前後で行った培養液の交換後数時間で細胞はアポトーシスにより死滅した。 2.高酸化的ストレス状態を示すSAMP11系統マウス、および対照のSAMR1系統マウスの新生仔皮膚由来線維芽細胞の初代培養系を用いて、抗酸化酵素活性ならびにその誘導と、ミトコンドリア膜電位の変化を検討した。 SAMP11、SAMR1由来細胞とも培養5日で活性酸素種が約1.6倍増加した。SAMR1由来細胞では培養7日で培養3日の値まで減少したが、SAMP11マウス由来細胞では培養5日以降減少しなかった。現時点ではSAMP11由来細胞の培養5日以降認められる活性酸素種の増加は、ミトコンドリアの機能障害による産生亢進であり、消去系機能の低下によるものではないと考えられた。 3.SAMP10系統マウスは、加齢に伴い嗅球〜大脳前方部が萎縮し、同部の皮質の大型神経細胞が減少する。同系統はまた、加齢に伴い学習記憶障害、意欲障害を示すようになる。今回高齢マウスにおいて、TUNEL染色陽性神経細胞の分布、ユビキチン化封入体を有する神経細胞の分布が、脳萎縮の部位に部分的に重なることを明らかにした。 同系統マウスの神経細胞、グリア細胞の単離、培養は、1と同様の方法で行うことができた。抗GFAPおよび抗Neurofilament抗体で染色したところ、神経細胞培養系の純度は99%以上であった。培地交換後の神経細胞のアポトーシスは、交換培地として無血清培地を用いることにより防ぐことができた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2003年 
    代表者 : 坪山 直生; 細川 昌則; 清水 基行
     
    73人の若年成人女性の腰椎、大腿骨近位部骨密度の測定を行った。同時に末梢血の採取を行い、DNAを抽出した。骨密度に影響を及ぼすと考えられる疾患や薬剤投与の既往のある症例を除外し、解析を行った。まずこれまで骨量と相関が発表されている、Estrogen receptor α、Vitamin D receptor,5,10-Methylenetetrahydrofolate Reductase (MTHFR)に関してその多型と骨量との相関を解析した。Estrogen Receptor αの1st intron内のPvull, Xbal RFLP及びVitamin D receptorのpolymorphismと大腿骨頚部、及び腰椎BMDとの間には相関を認めなかった。MTHFRについては第1,第2,第3腰椎に関してVV genotypeが他のgenotypeに比べ、高骨量であるという相関がえられた。次に新しい候補遺伝子であるIFP35のすべてのexon(5'3'-UTRを含む)内の多型をSSCP法及びdirectsequence法にて検索したが多型は存在しなかった。 上記のhuman studyと並行して低骨量系SAMP6と高骨量系SAMP2とのsub-congenicマウスの作成を行い、重要な骨量制御遺伝子座の存在する第13染色体に付いて、遺伝子存在領域を約3cMに絞り込み、その領域内にある74個の遺伝子の全exonの塩基配列解析をすすめた。これにより15個の遺伝子でアミノ酸の配列が異なる一塩基多型が存在することを確認した。そのうちGgps1(geranyl-geranyl diphosphate synthase 1)、Tbce(tubullin specific chaperone E)が骨量制御候補遺伝子として有力と考えられた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -2000年 
    代表者 : 坪山 直生; 細川 昌則
     
    これまでに、我々はSAMP6のlow peak bone massに連鎖するQTLが第11、13、X各染色体に存在することを示した。今回、polygene系の遺伝形式であるSAMのシステムをsingle gene系の遺伝形式に変換するために、各々の染色体について変異のあるQTLを一つずつ持つcongenic mouse各系統の作製を試みた。SAMP2とSAMP6を、QTL領域の3つのマーカー(約20cMのinterval)による選択を行いながら、連続7回戻し交配して、第11、13、X各染色体で一つのQTLを含むSAMP2のbackgroundをもつ系統、SAMP6のbackgroundをもつ系統の2系統、合計6系統を作製する予定で実験を開始した。高骨量系のSAMP2または低骨量系のSAMP6を連続7回戻し交配することによりcongenic mouseを作製し、第11、13、X各染色体で一つのSAMP6のintervalを持ちbackgroundがSAMP2である系統を各々P2.P6-pbd1^a、P2.P6-pbd2^a、P2.P6-pbd3^aとし、逆にSAMP2のintervalを持ちbackgroundがSAMP6である系統を各々P6.P2-pbd1^b、P6.P2-pbd2^b、P6.P2-pbd3^bと名付けた。backgroundにcontaminationのないことを確認し、当該染色体のgenotypingおよびMD(microdensitometry)、DEXA(dual energy X-ray absorptiometry)、pQCT(peripheral quantitative computed tomography)にて骨密度測定を行った。P2.P6-pbd1^a、P2.P6-pbd2^aではSAMP6のintervalが各々48cM、15cM挿入されており、background系統であるSAMP2より有意に低骨密度であった。また、P6.P2-pbd1^b、P6.P2-pbd2^bではSAMP2のintervalが各々32cM、15cM挿入されており、background系統であるSAMP6より有意に高骨密度であった。特にP6.P2-pbd2^bでは、DEXAで測定した全身骨密度もSAMP6より有意に高値であり、第13染色体ではQTLの効果は全身性であることが示唆された。これらの結果から原因遺伝子が第11及び13染色体のQTL上に存在することが証明された。他の系統は個体数が揃い次第、骨密度測定を開始する。また、SAMは、現在13系統からなるrecombinant-like inbred strainであるが、最低骨量系統であるSAMP6は第11染色体で他の系統と異なった特異的なマイクロサテライトマーカーハプロタイプを示し、mutationの存在の可能性がが示唆された。また、最大の骨量系統であるSAMP1、SAMP2、SAMP8は第13染色体上で、同一のハプロタイプを示し、高骨量と関係する多型の存在の可能性を示唆し、congenic mouseの結果を裏付けた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 細川 昌則; 樋口 京一
     
    老化促進を示すSAMPマウス9系統と対照のSAMRマウス3系統のマイクロサテライトマーカーによるゲノムタイピングを行った。第4、14、16、17染色体上に、SAMPに共通で、SAMRと異なる領域が同定され、この領域に老化の促進に関連する遺伝子が存在する可能性が示された。成熟期の最大骨量の低いSAMP6と高いSAMP2およびそのF1、F2交雑群雄マウスを用い、マイクロサテライトマーカーの多型と成熟期骨量間の連鎖解析を行った。第11番、13番、X染色体上にQTL(Quantitative Trait Loci)の存在を示した。老化促進を示し短寿命のSAMP11と長寿命のSAMR1の新生仔の背部皮膚より単離、継代培養した線維芽細胞の試験管内加齢を検討した。試験管内加齢に伴い2倍体細胞が減少し多倍体細胞が増加した。この変化は両系統由来細胞に共に認められたが、P11由来細胞では試験管内加齢が促進していることが示された。アミノグアニジン添加はP11由来初代培養細胞の過酸化脂質を減少させ試験管内加齢を遅延させた。SAMP8は加齢に伴い、学習・記憶障害と神経・グリア変性、肝・脳の高酸化状態を来す。2カ月齢のP8と対照のSAMR1雄マウスの脳組織よりミトコンドリア画分を調製し、自由電子産生量、コハク酸脱水素酵素活性、酸化的リン酸化能を測定した。P8はR1に比べ複合体2より下流での酸化的リン酸化機能の亢進、呼吸調節率の低下を認め、脳組織のミトコンドリアが非効率な状態で機能亢進していることを示した。 本研究により老化過程を促進し、老年性変性疾患を増悪する機構にミトコンドリア機能不全による高酸化ストレス状態よる細胞機能障害が関わることが示唆された。さらにSAM系統のゲノムタイピングの情報は今後の遺伝学的解析に有用であると考えられた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 樋口 京一; 細川 昌則
     
    アミロイドーシスは微細なアミロイド線維が細胞外に沈着する病態であり、本来生理的機能を持つ蛋白質が線維状に重合、沈着し生体に傷害を与える。プリオンやマウス老化アミロイドーシスですでに存在するアミロイド線維がアミロイド蛋白と接触し、構造変換を誘導し雪だるま式に重合・線維沈着を引き起こすという「蛋白構造伝播仮説」が唱えられ、その検証がアミロイドーシスの発症機序解明のための重要課題となっている。マウス老化アミロイドーシスをモデルとして蛋白構造伝播仮説の検証を目指し以下のような研究を行った。 1.マウス老化アミロイド線維(AApoAII)投与によるアミロイド誘発 AApoAIIをマウスに投与(静脈内、腹腔内)しアミロイドーシスの発症を解析した。投与後1ヶ月で全マウスにAApoAII沈着が、3ヶ月で全身に重篤な沈着が確認され、アミロイドーシスが著しく促進された。 2.ProapoA-II蛋白質とアミロイド線維核岐成反応 アミロイド線維蛋白画分からAApoAII以外の小量沈着蛋白を精製した。小量蛋白質はapoA-IIのN末端にAla-Leu-Val-Lys-Argのプロペプチドが切断されずに残存しているproapoA-II蛋白であり、アミロイド線維中のproapoA-II濃度は血漿中の10倍に濃縮されていた。 3.AApoAIIアミロイド線維による感染の可能性 AApoAIIをマウスの消化管内に投与しアミロイド線維による感染の可能性を解析した。投与後2ヶ月で全てのマウスにアミロイド沈着が観察され、その後沈着が増大した。高齢マウスを若齢マウスと同一ケージ内で3ヶ月間飼育した結果、若齢マウスでアミロイド沈着が誘発された。 以上の結果からアミロイドーシスの蛋白構造伝播仮説はほぼ実証されたと考えている。今後は最初の線維核形成や線維伸長反応を抑制・促進する因子の解析が重要と思われる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 坪山 直生; 滋野 長平; 細川 昌則
     
    平成9年度までの結果で、SAMP6のlow peak bone massに連鎖するQTL(quantitative trait loci)が第11、13、X各染色体に存在することが示された。そこで、平成10年度は、最大のlod scoreを示す第11染色体上のcandidate geneの一つであるG-CSFのgenomeの塩基配列を決定したが、差は見られなかった。現在、同染色体上のchondroadherinのcDNA塩基配列をシークエンス中である。今のところ決定的な異常は認められていない。原因遺伝子が既知のものでない可能性も考え、その場合の遺伝子単離に必要なpositional cloning の前段階として、polygene系の遺伝形式であるSAMのシステムをsingle gene系の遺伝形式に変換するために、各々の染色体について変異のあるQTLを一つずつ持つinterval-specific congenic mouse各系統の作製を開始した。SAMP6と高骨量系マウスSAMP2のF1交雑マウスから、QTL領域の3つのマーカー(約20cMのinterval)による選択を行いながら、連続7回親系統にbackcross交配して、第11、13、X各染色体で一つのQTLを含むSAMP2のbackgroundをもつ系統、SAMP6のbackgroundをもつ系統の2系統、合計6系統を作製中である。現在、ヘテロになっているN7同士を交配させて作った、マーカーの対立遺伝子がホモであるN7F1が数匹完成した。さらに匹数が増えたところで、各系統骨量測定を行うことで先の連鎖解析の結果を再確認し、原因遺伝子がinterval内に存在することを証明する。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1996年 
    代表者 : 樋口 京一; 細川 昌則; 國貞 隆弘
     
    これまで効果的な治療法を存在しなかったアミロイドーシスに対する遺伝子治療法の開発を目指して、マウス老化アミロイドーシスを用いて2年間で以下のような基礎的研究を行った。 1. AApoAIIアミロイドの遺伝形式の決定:アミロイドーシスを引き起こすApoa2^C遺伝子とwild typeのApoa2^bをヘテロに持つコンジェニックマウス(R1. P1-Apoa2^)ではアミロイドーシス発症が著しく遅延、軽減し、遺伝子治療の可能性を示した。2. apoA-II組み替えウイルスの発現を検定するためのマウス肝細胞の培養系の確立:Apoa2^Cコンジェニックマウス(R1. P1-Apoa2^C)の肝細胞の初代培養系を確立した。3.遺伝子治療効果の評価システムの開発:アミロイドーシス発症にはマウスでも8-12ヶ月という長期間が必要であった。アミロイド線維核をR1. P1-Apoa2^Cマウスに血中投与すると、1ヶ月でアミロイドーシスを発症できることを明らかにし、短期間での遺伝子治療法の評価が可能になった。4.wild type apoA-II組換えアデノウイルスの作成:アデノウイルスは広範囲な細胞に感染し遺伝子を効率よく発現させることが可能である。アデノウイルスペクターを用いて、wild type apoA-II遺伝子発現によるアミロイドーシス発症の抑制を試みた。組み替えウイルス作成用のコスミドカセット等は東京大学医科学研究所の斎藤泉氏より供与を受けた。ヒトアデノウイルス5型(Ad5)のほぼ全長を含むコスミドカセット(pAdexlCAwt)にwild type apoA-II遺伝子をサブクローニングした。COS-TPC法によりコスミドと親ウイルスDNA-TPCを293細胞にトランスフェクトし、相同組み換えを起こした組み換えウイルス中から目的のapoA-II発現ウイルスを得た。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1995年 
    代表者 : 坪山 直生; 細川 昌則
     
    退行期骨粗鬆症モデルマウスSAMP6は生後4カ月で低い最大骨量をとったのち、月齢とともにゆっくりと一定の速度で減少していく。また、対照のSAMP2はより高い最大骨量を示す。最大骨量が形成されるまでの2ヵ月齢の雄マウス(n=4)にh-PTH(1-34)60オg/kgを皮下注射し、所定の時間ののちに腎臓、大腿骨および脛骨を採取し生理食塩水で骨と骨髄を分離した。Northern blotでc-fos mRNAの発現量を調べ、免疫染色によりc-Fos蛋白の局在についても検討を行った。 骨ではPTH投与によりc-fos mRNAの発現量は30分でピーク値をとり、その後SAMP2では速やかに減少するが、SAMP6ではゆっくり減少し遷延化する傾向にあり、1時間でSAMP2にくらべ有意に発現が高かった。骨髄では統計学上、有意な変化は認められず、SAMP6、SAMP2間にも有意な差は認められなかった。PTH受容体が存在する腎臓でのc-fosの発現についても検討したが、腎臓での発現は骨よりも低く、SAMP6の方が低い傾向にあった。したがって、骨でみられた現象は組織特異的と考えられる。c-Fosの免疫染色の結果、PTH投与3時間後のSAMP6の大腿骨で骨芽細胞、破骨細胞様細胞、一部の骨細胞にc-Fos蛋白を認めた。 対照としたSAMP2に比べ、低い最大骨量をもつSAMP6では、PTHによって骨に誘導されるc-fos mRNAの発現量の多い状態がピーク後にみられ、その発現の減少が遅延していた。骨のリモデリング、特に骨吸収においてc-fosが重要な役割を果たしているので、PTHによって誘発されたc-fosが間接的に破骨細胞系に長く作用し、破骨細胞の成熟化、活性化を促進し、骨吸収の亢進状態をひきおこすのではないかと考えられる。この骨吸収の亢進が最大骨量低下の一因となっている可能性がある。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1991年 -1993年 
    代表者 : 竹田 俊男; 樋口 京一; 細川 昌則; 秋口 一郎
     
    1.P/8を用い受動的回避反応における潜時と脳幹部空胞変性を精査したところ、脳幹網様体大細胞群の脊内側部の海綿状変性と記憶障害が密接に関連することが分かった。R/1の脳幹網様体大細胞群を両側破壊し受動的及び自動的回避反応をテストしたところP/8と同様に学習・記憶障害を認め、脳幹網様体と学習・記憶機能との間に密接な関連があることが分かった。2.合成ヒトβ/A4_<1-24>ペプチドに対する抗体を用いP/8脳の免疫組織化学的研究の結果、中隔野、大脳皮質深層・海馬、小脳、脳神経核及び根部等広汎な部位に径1.5〜2.5μmのβ/A4様免疫活性陽性顆粒(β-LIGS)を認めた。本顆粒は加齢と共に増加し、特にP/8脳では著しい。β-LIGSの構成成分はβ/A4部位を含む14〜18kDaのAPP断片の可能性が高い。3.画像解析装置を用い、P/10脳の萎縮部位を同定した。加齢に伴い最も強い萎縮をみたのは大脳前頭野新皮質でその他の皮質領野、嗅脳系皮質、扁桃体にも広範に萎縮をみた。大脳皮質萎縮は大型ニューロンの脱落と細胞体萎縮による。正常老化R/1脳では生後24ヶ月齢で頭頂野新皮質の軽度の萎縮をみる程度である。以上アルツハイマー病との類似はP/10のモデル動物としての重要性を示唆する。4.P/10マウスを用い、T-迷路を使用した条件回避学習テストを行ったところ、対照のR/1に比べP/10マウスでは、T-迷路にて左・右の弁別能力は維持しているが、条件刺激と無条件刺激を関連さすことにより、来るべき嫌悪ショックを予知し回避する能力が加齢によって低下してきたことを示す。5.食餌中の脂肪酸の変化がP/8の学習・記憶障害に与える影響をみるため9%のべにばな油(リノール酸に富む)、あるいはしそ実油(α-リノレン酸に富む)を含む精製飼料を自由摂取させ種々の学習課題について検討したところ、しそ実油群において学習・記憶障害の進展が有意に抑圧されることが分かった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1991年 -1992年 
    代表者 : 樋口 京一; 細川 昌則; 竹田 俊男
     
    我々はこれまでにマウス老化アミロイドーシス発症の時期,程度の決定因子として沈着蛋白であるapoA-IIの一次構造が重要であることを示したが,同時に同一のapoA-II蛋白を持ちながらマウスの系統により沈着程度に差が存在し,apoA-IIの構造以外にアミロイドーシス発症を修飾する因子が存在することを明らかにしてきた。本研究の目的はこの修飾因子を分子遺伝学的手方を用いて検索する事であり,これによって老化アミロイドーシスの背後にある老化の実体にも迫ろうとするものであった。 2年間の研究によって明らかになったのは以下の点である。 1.apoA-IIの一次構造以外のアミロイドーシス発症を修飾し,促進する遺伝因子の数は1つで遺伝様式は常染色体優性であると推測できる。 2.個体の老化の速度がアミロイド沈着を修飾することが示唆される。 3.amyloidogenic apoA-II(Apoa2^c)とamyroid-resistant apoa-II(Apoa2^b)遺伝子を促進老化系統(SAM-P/1)と正常老化系統(SAM-R/1)の遺伝的背景に導入したcongenic mice を作成した。これらのcongenic mice を利用した研究の結果、apoA-IIの一次構造がHDLの代謝を規定している事が判明し、さらにApoa2^cがアミロイドーシス発症を促進することが確認された。 4.修飾因子の染色体上の位置の決定を目指すため、DNAマーカーとしてマウス染色体状に散在する内在性白血病ウイルス(MuLV)プロウイルスを利用しするゲノムマッピングシステムを確立した。 5.apoA-II mRNA量、合成量は加齢にともない急激に、しかもアミロイド沈着に先行して減少した。この結果はapoA-II geneのtranscriptionalな調節に始まる一連の代謝の変化が老化アミロイドーシスの引き金になっていることを示唆している。 今後は,MuLVとマイクロサテライトの系を利用して交配実験で得られたマウスのマッピングを行い,アミロイドーシス修飾因子や促進老化遺伝子の染色体上の位置の決定を目指す。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1990年 -1992年 
    代表者 : 竹田 俊男; 樋口 京一; 細川 昌則; 秋口 一郎; 宮本 政臣; 松尾 隆夫
     
    1.P/8脳の1連の形熊学的研究の中で明らかになった所見として次の2つがある。即ちスフエロイドとβ-LIGSである。前者は延髄後索核腫大軸索病変(スフェロイド)でO/8では若齢期より出現し加齢と共に変化み強くなる。後者はヒト合成β/A4_<1-24>ペプチド抗体に反応する径1.5〜2.5μmの顆粒状構造物で中隔野、大脳皮質深層、海馬、小脳、脳神経核及び根部等広汎な部位に認める。本顆粒は加齢と共に増加し、特にP/8脳では著しい。β-LIGSの構成成分はβ/A4部位を含む14〜18KDaのAPP断片の可能性が高い。次に画像解析により,P/8に特徴的な脳幹網様体特に網様体巨細胞核における空胞変性の総空胞数及び空胞総面積が学習・記憶障害程度と密接に関連すること、さらに学習・記憶障害を呈しないR/1系脳の脳幹破壊(両側)により,学習・記憶障害を呈するようになる事実が明らかとなりP/8にみる脳幹網様体特に網様体巨細胞核の海綿状変性が学習・記憶障害発症に重要な役割 を果していることを強く示唆する。 2.新たに確立されたP/10系では,加齢に伴い脳萎縮を示す。即ち生後4ヶ月齢に460mgに達する脳重の生後13〜16ヶ月齢で420mgと約8.6%の萎縮を示す。一連の詳細な形熊形測の結果,最も著して萎縮を呈する部位は大脳前頭野新皮質で,その他の皮質領野,嗅脳系皮質及び扁桃体にも広汎な萎縮を認める。またこの萎縮は大型ニューロンの脱落と細胞体萎縮に基づくことが確認された。この形熊学的変化を反映して,受動的回避学習及びT型迷路を用いた条件回避学習において加齢に伴って増強する学習・記憶障害を認めた。 3.学習・記憶障害の進展を食餌条件の変化により抑止する方法を確立する第一歩として食餌中脂肪酸をかえる,即ち9%ベにばな油(リノール酸に富む)あるいはしそ実油(α-リノレン酸に富む)を含む精製飼料を天々P/8に自由摂取させ種々の学習課題につき検討したところ,しそ実油群にて障害の進展が有意に抑圧されることが分った。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1989年 -1990年 
    代表者 : 樋口 京一; 細川 昌則; 竹田 俊男
     
    老化アミロイド-シスの分子遺伝子学的研究によって得られた新たな知見は以下に述べる事実である. 1、21系統の純系マウスにおいてapoAーIIの老化アミロイド線維としての沈着が示され、マウスの老化アミロイド蛋白がapoAーIIであることが判明した。2、各系統マウスのapoAーII遺伝子をPCR法で増幅し塩基配列を決定したところでアミノ酸配列が互いに異なる3種のapoAーII蛋白が存在することが明らかになった。3種のapoAーII(types A,B,C)は増幅したDNAを制限酵素、Cfr13Iと MspIで消化することによって区別できた。3、第5目のアミノ酸がglutamineという特徴を持つtype AのapoAーIIを持つSAMーP/1,SAMP/2,SJL/J等のマウスでは比較的若齢より、重篤なアミロイド沈着を示した。4、異なったtypeのapoAーIIを持ち系統のマウスを用いて交配実験を行ったところ,type Aをホモでもつ個体で強いアミロイドの沈着が観察された。5、SAMーP/1のapoAーIImRNA発現量ま4ヶ月齢より減少し始め14ヶ月齢では2ヶ月齢の約50%にまで減少した.ApoAーI,apoE,apoB等の他のアポ蛋白mRNAの発現量は変化しなかった.6.In vitroでアミロイド蛋白の線維化を定量化する系が確立され,アミロイド線維の重合がactineやmicrotubule等の重合モデルと同一であることが示された.7.apoAーIIの分子型とアミロイド沈着,促進老化との関係をより明確にするため,transgenic mouse及びcongenic mouseを現在作成中でありtransgenic mouseは第2世代,congenic mouseは第5世代まで進行している. 現在apoAーII分子型に主眼を置いたアミロイド-シス発症機構解明に進めると共に,apoAーII分子型以外のアミロイド沈着を修飾する因子の解析を行っている.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1989年 -1990年 
    代表者 : 竹田 俊男; 樋口 京一; 細川 昌則; 細野 正道
     
    1.老化促進モデルマウス(SAM)の系統維持が順調に行われた。即ち促進老化系8系統、正常老化系3系統計11系統について経時的な老化度評点、寿命等の老化特性および老化アミロイド症、学習・記憶障害等の老化病態のチェックにより、夫々の系統の特性が恒常的に維持されていることが確認された。 2.SAMーP/1マウスを用い、加齢に伴う自己抗体産生におよぼすカロリ-制限の影響を検討したところ、IgG、IgM抗ssDNA抗体は自由摂取群では加齢と共に増加する。これに対しカロリ-摂取40%制限群では生後8ケ月齢まで低下し以後11ケ月齢に若干増加する。この結果即ちカロリ-摂取制限の加齢の伴う自己抗体増加に対する抑制効果は、統計的に有意である。同様な結果はIgG、IgM抗dsDNA抗体についても得られた。昨年迄の結果を総合するとカロリ-制限による寿命の延長、老化度評点の低下等の効果は少くともその一部は、カロリ-制限により加齢の伴う免疫機能異常の出現を抑圧し、免疫機能を若齢期のレベルにより永く維持することによりことが示唆された。 3.SAMーP/1の特にin vitro系でのヘルパ-T細胞機能低下の遺伝的背景を探る目的でBIO・BR系マウスとの交配実験を行い種々検討を加えたところ、P/1系にみる低応答性は恐らく2個の遺伝子により支配され、そのうち1個は第7染色体上のGpiー1及びC遺伝子と連鎖していると考えられた。また同染色体上のHbb遺伝子とは有意な連鎖がみられなかったこと及びC遺伝子はGpiー1とHbb遺伝子との間の位置していることより、この低応答性統御遺伝子は第7染色体上のC遺伝子座よりGpiー1遺伝子の存在する動原体側の領域に位置していることが推測された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1987年 -1988年 
    代表者 : 細川 昌則; 樋口 京一; 竹田 俊男
     
    本研究により、現在ほとんど例がない、老年性白内障モデル動物の開発が進められ、水晶体の加齢、老化と白内障発症機序の関係が、ごく一部分ではあるが、形態学的、生化学的に明らかとなった。次にその概要を示すと、1.系統の開発;特徴的な促進老化現象と老化関連病態を示す、老化促進モデルマウス(SAM)より、加料と伴に白内障を自然発症する、新しい系統のマウスが、選抜と兄妹交配により、純系として樹立する試みがなされた。マウスは現在19世代に達し、白内障は10カ月以降75%以上に発症する様になる。この白内障は、単一遺伝子座による、メンデル型の優性又は劣性の遺伝形式はとらない様である。2.白内障の一般特性;白内障の頻度は雌に高い。生後10週前後より出現し、加齢と伴に発症頻度は高くなる。片眼性に始まり、両眼性となる。原因として、併発性、先天性、浸透圧性(及び糖尿病性)ではない事が示唆された。3.白内障の形態学的特性;成熟白内障では、特徴的な水晶体後極での、水晶体嚢の断裂、後方皮質、核周囲の水晶体線維の変性、膨化、液化がみられ、水晶体核の後方偏位をみた。硝子体血管系の存続と付着部水晶体嚢の菲薄化が透明水晶体においてもみられ、これが白内障発症に何らかの役割を果している事が示唆されたが、加齢による発症を充分に説明するには、別の機序が加わる必要があると考えられた。4.白内障の生化学的特性;白内障水晶体では、湿重量の低下、水分含量の増加、総蛋白量の低下をみた。さらに水溶性蛋白の減少、水不溶性蛋白、尿素不溶性蛋白の増加が正常水晶体においても認められたが、白内障水晶体ではこの変化が特に著しかった。水溶性蛋白では、加齢により、γークリスタリンの減少、P_Hークリスタリンの増加が加齢と伴にみられたが、白内障では、同様の変化に加え、β_H画分の分子量30,000の蛋白の特異的減少を認めた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1986年 -1988年 
    代表者 : 竹田 俊男; 樋口 京一; 細川 昌則; 鈴木 康弘
     
    1.系統維持のための日常的業務として(1)生後経時的に老化度判定基準に基き老化度評点をつけ、その加齢に伴う変化の観察(2)平均寿命算定(3)死亡例の病理的検討を行い、SAM-P7系統、SAM-R3系統が順調に維持され、夫々特徴的な老化病態が安定して発現していることが確認された。 2.今回新たにR/3系に白内障、P/3系に変形性顎関節症が認められた。前者はselectionにより頻度が上昇したもので、後者は各系統顎関節の系統的な観察により発見されたものである。即ち前者の頻度は生後10ケ月で75%、後者は生後12ケ月で100%に達する。 3.このモデル動物にみる特徴的な老化病態とその好発系統を整理すると、老化アミロイド症(SAM-P/1-P/2)、白内障(SAM-R/3、SAM-P/3)、骨粗鬆症(SAM-P/6)、学習・記憶障害(SAM-P/8)、変形性顎関節症(SAM-P/3)、免疫能低下(SAM-P/1-P/2)となる。この間これら各系統を用い、これら各種老化病態の発症機序解明のため多くの実験がなされ、またなされつつあり、一定の成果をあげている。 4.私達はすでに食餌摂取量制限が確実に平均寿命を延長、老化アミロイド等の老化病態の軽症化を惹起することを報告したが、今回この効果の機序について検討したところ、これら食餌制限により免疫機能が長期に亘り正常状態に維持され、かつ加齢に伴って進行する自己免疫異常が抑制されることによることが分った。 5.今後上記3に示した病態発症機序解明のための実験をより精力的に行なうと共に、これら病態発症を予防しうる有効な手段発見のため上記4の食餌制限以外に栄養素負荷(添加)、あるいは運動負荷等を試みる。

委員歴

  • 2018年04月 - 現在   老化促進モデルマウス(SAM)学会   会長
  • 1997年 - 現在   日本基礎老化学会   評議員・理事・監事   日本基礎老化学会
  • 1989年 - 2017年   日本病理学会   学術評議員   日本病理学会
  • 1997年   老化促進モデルマウス研究協議会   幹事,事務局長   老化促進モデルマウス研究協議会
  • 1983年   日本結合組織学会   評議員   日本結合組織学会